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「こんなはずじゃなかった、介護保険」マラソンシンポの討論
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 こんなはずじゃなかった、介護保険――。「介護の社会化」を掲げた制度スタートから24年。負担増・給付カットの見直しが繰り返され、介護人材不足も深刻さを増す。なくてはならないはずの制度をどう守るのか。制度創設に関わった市民、元官僚、介護事業者ら20人以上が16日、8時間ぶっ通しのオンラインシンポで討論した。

 まず、第1部の「制度編」では、制度創設を担った元厚生労働省官僚の香取照幸さん(一般社団法人未来研究所臥龍代表理事)がビデオ出演で報告。国民から高い評価を得て制度の基本構造は安定的に維持されているとしつつ、社会経済状況の変化を受けた改革が必要だと指摘した。

 いま考えるべき問題として財源確保、保険料負担の問題をあげ、「『負担』の問題なしにあれがほしい、これがほしいと議論をしてもないものねだりにしかならない。『負担』の問題に正面から立ち向かわない限り、制度を前に進めることはできない」と語った。

 社会保障制度改革国民会議の委員などを歴任した慶応大教授の権丈善一さんも「介護マンパワーが不足しているというならば、税・社会保険料を増やすしか方法はない」と論じた。

 一方で、「介護保険改悪史」というタイトルを掲げて報告したNPO渋谷介護サポートセンター理事長の服部万里子さんは、「高齢化が進めば利用者が増え、当然サービスも増える。にもかかわらず、それを利用者負担にかえていこうという動きは限界にきている」と批判し、軽度の要介護者を介護保険サービス本体から切り離していこうとする方向性に警鐘を鳴らした。

訪問介護への危機感訴える声も

 第2部の「現場編」では、今年度の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられた訪問介護への危機感を訴える声が続いた。

 東京都で訪問介護事業を運営するNPO法人グレースケア機構代表の柳本文貴さんは、引き下げの影響で自身の事業所では月45万円程度の減収になり、ヘルパー不足で新規依頼を受けられないケースが相次いでいるという実態を明かした。

 介護報酬が「身体介護」サービスよりも安いため、調理や掃除などの「生活援助」サービスを引き受けない大手事業所もあるとし、高齢者や家族が利用を断られる状況が加速していると警鐘を鳴らした。

 家族の立場からも、認知症の人と家族の会新潟県支部代表の金子裕美子さんが報酬引き下げへの不安を訴えた。

 夫と母親の在宅介護を19年続けてきた経験を金子さんは「在宅介護を支えてくれるヘルパーさんの存在を国は大事にしてほしい。私たち介護者を絶対に殺人者にしないでほしい」と語った。

 一方、特別養護老人ホーム「駒場苑」(東京)の施設長、坂野悠己(ゆうき)さんは、施設の人員配置基準緩和の見直しについて懸念を表明した。

 坂野さんは「テクノロジーで一部負担軽減ができたとしても、人員配置を減らすのには無理がある。センサーやモニター管理にしても、具体的に動くのは人間になる。結果的に(労働環境が)過酷になり虐待も増えるのではないか。虐待みたいな介護しかできなくなる。それはもはや『介護』ではなく『管理』だ。こんな見直しを国が進めようとしているのが信じられない」と危惧した。

制度をどうすれば守れるのか…

 施設介護の現状に詳しい「元…

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