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木漏れ日の中に咲くアイラトビカズラ=2025年5月4日、熊本県山鹿市菊鹿町、城戸康秀撮影
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 熊本県山鹿市菊鹿町の自生地で、国の特別天然記念物「相良(あいら)のアイラトビカズラ」が花をつけた。ブドウの房のように垂れ下がる赤紫の花が、日差しによってあでやかに変化する。

 樹齢は千年を超えるとされる。平安時代末期の源平騒乱で近くの相良寺に火がかけられた際、本尊の千手観音がトビカズラに飛び移って難を逃れたとの伝説がある。

 市教育委員会によると、1940(昭和15)年に国の天然記念物に指定され、52(同27)年に特別天然記念物に格上げされた。天草市や長崎県佐世保市でも自生が確認されているが、指定されているのは「相良」のみだという。

 東向きの斜面に三つある繁茂棚は、いずれもトビカズラに厚く覆われている。5月の日差しの下から棚の中に入ると、目が慣れるまで花に気づかないほどの暗さだ。

 例年は繁茂棚に連なるように咲き誇るが、今年は数えるほど。市教委によると、花は少ないが樹勢は変わりなく旺盛だという。花の少なさについて、担当者は「冬の寒さが厳しかったからか花芽が少なかった。花つきがよかった昨年が表年で、今年は裏年ということかもしれない」と話していた。

 最も南側にある棚は木製の柱が腐食するなどしており、立ち入り禁止となっている。来年度中に棚を取りかえるが、トビカズラは一部であっても伐採できないため、ジャッキで全体を持ち上げて工事を進めるという。

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