墓の「守り手」が減り、墓じまいが過去最多となる中で、「お墓のデジタル化」が進んでいる。
北海道に住む40代の女性は今年、昨年11月に81歳で亡くなった父親を合葬墓に納骨した。長男ではない父親には墓がなく、これからつくろうかと迷ったが、姉妹で跡取りもなく、断念した。
遺品整理をしていると、大手建設会社に長年勤めた父親の古いアルバムがでてきた。
- 「木のまわりを、ただ漂っていたい」 市原悦子さんは樹木葬を選んだ
ページをめくると、家族でスキーに行った時、海外に赴任した時の写真などが400枚近く残っており、走馬灯のように思い出が駆け巡った。
父親の生きた証しをどこかに残したいと思い、女性は「永代型デジタル墓」と契約し、写真をデジタル空間に残す作業をしている。
永代型デジタル墓とは、女性が父親を納骨した合葬墓のようなリアルの墓に、永久保存できるQRコードを取り付け、先祖の歴史や家族の写真、動画などをデジタル空間に残すというもの。
携帯電話などでQRコードを読み込むと、いつでも永久保存した写真や動画を閲覧することができる。遠方の家族が「リモート墓参り」することもでき、チャットでお彼岸や命日などの連絡もできる。
遺骨を分骨し、写真立て型のカロート(納骨スペース)付きの墓台に、QRコード付きの墓標をはめ込む小型のデジタル墓を自宅に置き、手元で供養を続けることも可能だ。
幅60ミリ、高さ50ミリ、厚さ55ミリのカロートには3グラムまで納骨できる。
「収容できなかった遺骨は散骨されたり、樹木葬、合葬墓などに分骨したりするケースもある。墓じまいする時、せめて先祖の墓誌などの記録や歴史をどこかに残したいという人は多い」
こう語るのは、ソフトウェア開発と販売を手掛けるスマートシニア(神奈川県)の藤澤哲雄代表(60)だ。
昨年2月に発売されたデジタル墓の契約者は全国で1500人に上るという。
藤澤さんによると、デジタル墓は故郷の墓の管理が難しい人、散骨や樹木葬、合同墓などを選ぶ人、子どもなど跡継ぎがいない夫婦、さらに墓石を撤去して更地にし、使用権を墓地管理者に返す「墓じまい」を考えている人にとっては有効な手段という。
米国で「デジタル墓」が普及したきっかけは、アップル創業者スティーブ・ジョブズの死でした。メタバース霊園も登場するなど、進む「弔いのデジタル化」について専門家に意見を聞きました。
墓にQRコードをつけて家族…