東京電力福島第一原子力発電所の事故で不安が高まったのが子どもの甲状腺被曝(ひばく)だった。事故後、甲状腺の被曝線量を精密に測定する機器が開発された。
甲状腺はヨウ素を取り込み、新陳代謝や成長に必要なホルモンをつくる。原発事故で放出された放射性ヨウ素が体内に入ると、甲状腺に集まり内部被曝を起こし、がんの原因となる。密接に関係する放射性ヨウ素の半減期は8日と短いため、できるだけ早く測定を行う必要がある。
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福島での原発事故当時、国の測定体制が不十分で、事故直後に甲状腺を測定したのは、福島県内で高線量が計測された地域の15歳以下の1080人。測定には、通常は空間線量や外部被曝を測るスクリーニング用の機器を使った。事故直後の実測値が少ないため、環境中の放射性物質データなどから出した推計値で個人の被曝の影響を評価している状況だ。
精密に測定できる甲状腺専用の測定機器は原子力災害拠点病院などに設置されているが、大型で固定式のため、原発事故時に大人数への迅速な対応が求められる場合、既存の機器では対応が困難だった。
チェルノブイリ原発事故後に子どもの甲状腺がんが増えたことから、福島県民の間で甲状腺がんの心配が広がった。県は事故当時18歳以下だった県民に、甲状腺の超音波検査を続けている。
14年前の反省から、量子科学技術研究開発機構(QST)と日本原子力研究開発機構がそれぞれ新たな機器を開発。持ち運ぶことができるため、迅速な測定が可能になり、高精度で測定できるようになった。
従来の機器では、乳幼児の小…