日本中を旅する車寅次郎を主人公に、人間の幸せとは何かを問いかけた映画「男はつらいよ」。今年は公開が始まって55年のメモリアルイヤーだ。寅さんの故郷、東京・柴又では様々なイベントが開かれているが、やはりこの地を忘れてはいけない。映画が制作された松竹大船撮影所(鎌倉市)――。
妹さくらを演じた倍賞千恵子さん(83)は第1作(1969年)の撮影シーンをよく覚えている。
「結婚式で記念写真、お兄ちゃん(寅さん)が(チーズではなく)『バター』と言い出すんです。何度テストしても、『笑わないの!』とカメラマンから注意されても、駄目でした」
白粉がくしゃくしゃになり、マスカラも頰に落ちて散々。撮影は深夜まで及んだが、最後は笑ったままのシーンがそのまま使われている。
「当時の私は20代で独身。子どもを産んだこともなく、どう演技しようか悩みました」。楽屋の鏡の前で「さくらになーれ、さくらになーれ」と呪文を唱えたという。
監督支えた「山田組」
大船撮影所は色々な音や声が…