慶応大先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)は、研究者をめざす地元の若者を支援するため、庄内の高校生を研究助手、特別研究生として毎年受け入れている。今年度は過去最多の33人を迎えた。
「高校生研究助手」は、研究者の指示のもと研究を補助する。2009年度に始まり、研究所に隣接する県立鶴岡中央の生徒を任用してきた。今年度は19人が採用され、農産物の研究やがん細胞の研究など10のプロジェクトに従事する。放課後に研究所に勤務し、給与が支払われる。
一方、医学、環境、食品などの分野で自らテーマを設定して研究にあたる「特別研究生」の制度は11年度にスタート。放課後や夏休みに研究所に出入りでき、許可を得て実験機器などを自由に利用できる。
今年度は致道館、鶴岡工、羽黒、鶴岡東、酒田東、酒田南の6校から計14人が入学。全国の高校生・高専生の研究コンテスト「高校生バイオサミットin鶴岡」での入賞や、学会発表をめざす。
5月10日には研究助手の任用式と特別研究生の入学式があった。荒川和晴所長は延べ約350人が巣立ち、博士号を取った先輩もいると紹介。「誰も予期していないすごい未来が待っている可能性がある。信念を持って研究活動を進めて」と激励した。
あいさつに立った酒田東2年の後藤心さんは2年目の特別研究生で、遺伝性の難病の治療法を研究する。「明確な目標を持って、考え方を私らしく表現できるよう精進したい」と語った。
研究所発のベンチャー企業で、細胞内の代謝物質の分析を手がける「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ」で働く松田りらさん(30)は元研究助手。「分からないことや失敗が多く、苦労するかもしれないが、答えが一つではないことこそが科学の面白さ」と後輩にエールを送った。(清水康志)