Smiley face
写真・図版
4代目が絵に残していた「亀屋良永」の旧店舗=下邑隆さん提供
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

現場へ! あんこを守れⅡ①

 2年前にこの欄で「あんこを守れ」と書いた。食をめぐる生業(なりわい)を、効率の物差しではかろうとする風潮への問いだった。答えは身近なもの、個人的なことにあると感じる。ただなかなか記録に残らず、後に伝わらない。「いま、聞いておかなくては」と思う。

 身近で、個人的な食べもの、お菓子の現場を京都から歩く。甘いものの反対にある戦争の時代、お菓子屋さんはどうしていたのだろう。

 老舗の菓子屋さんの集まりで、「昔のことならば、お父さんに」と教わって、「亀屋良永」の5代目、下邑(しもむら)隆さん(82)をたずねた。京都市役所の近く、趣ある一軒家に名物の「御池煎餅(せんべい)」の看板が掲げてある。さくさくした麩(ふ)焼き煎餅は、甘みも軽い。

 「京都に来るのは何年かに1度という方に、ここは変わらないと安心いただける店を心がけてきました。戦後、再建して、ずっとです」

 京都市は太平洋戦争末期、防空のため建物疎開を繰り返し行っている。空地を作り、道幅を広げるのに1万戸以上が取り壊しの対象になり、その中に前の店も。知らせから数日で一家は立ち退いた。

 祇園祭で大勢の観光客が山鉾(やまほこ)巡行を見守る御池の大通りは、こうしてできたのだ。

 「幼くて覚えていませんが…

共有