Smiley face

【動画】山口県萩市を拠点に活動する大衆演劇の劇団「鹿島寿」=桜井健至撮影

 「踊る神様」と呼ばれていた。

 2歳になったころから、晩ご飯が終わると自宅で演歌や歌謡曲をカセットテープで流し、長い日は2時間にもわたって家族の前で即興で踊る――。

 鹿島雅さん(23)はそんな子どもだった。

 「見てくれないと不機嫌になって。みんなを夜な夜な苦しめていたかもしれません」と笑う。

 芸名は、市川雅。大衆演劇「鹿島寿」一座の役者だ。

写真・図版
「花車」で踊る雅さん=2023年12月15日午後9時58分、山口県萩市、奥村智司撮影

 「旅から旅へ」の巡業はせず、山口県萩市を拠点に、日帰りで公演をする。

 座長の鹿島栄さん(88、芸名・市川冨士夫)は、雅さんの曽祖父にあたる。10人の座員のほとんどは家族か親類で、全国でも珍しい4代にわたる一座だ。

 鹿島寿は1984年、栄さんが別の劇団から独立して立ち上げた。それから20年近くたったころ、雅さんが生まれた。

 「子や孫たちを小さいときから舞台に立たせてきたが、芝居に入り込むのは雅が一番だった。魂が舞台を好きなんでしょうな」

 栄さんはそう話す。

 生後11カ月で初めて歩いたのは舞台の上。親子の別れの場面では必ず涙をぽろぽろとこぼし、観客のもらい泣きを誘った。いつしか、一座に欠かせない子役となっていた。

 しかし、10代の一時期、舞台を離れた。

 「美容師になりたい」との思…

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