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新選組とゆかりの深い東京・日野市で隊士のコスプレをするファンたち=2012年

 繰り返し小説化、映像化されてきた新選組。だが、歴史学で価値ある研究対象とみなされたのはこの20年ほどにすぎないという。昭和女子大専任講師の三野行徳さん(50)は、「歴史学研究」9月号に寄稿した論考「新選組表象をめぐる市民・新選組研究家・歴史学」(歴史学研究9月号)の中で、新選組研究をめぐり生じた、学界と在野研究家の微妙な関係に着目する。

歴史学が長く注目してきたのは薩長

 三野さんは日本近世史やアーカイブズ学(記録資料の保存、管理、歴史の研究)が専門。2004年のNHK大河ドラマ「新選組!」では時代考証にも関わった。

 論考で三野さんはまず、新選組の位置づけは、社会的な認識とアカデミズムの間で大きな隔たりがあると述べる。

 戦前から現在まで、新選組は「燃えよ剣」(司馬遼太郎)といった数多くの小説やドラマ、映画などで幕末物の定番として扱われてきた。脚色や創作も加えたこれらを通して、武骨で政治が苦手な近藤勇、冷徹な組織人の土方歳三、武士身分への憧れを持ち幕府へ忠誠を貫いた集団、といった現在よく知られたイメージが定着したという。三野さんは論考で、こうしたフィクションに影響を受けたアカデミア外の在野研究家たちが、歴史学に先がけて隊員たちの史料を発掘し、豊富な歴史像をつむいできたと指摘する。

 一方、歴史学では長らく明治…

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