Smiley face
写真・図版
新作漫画のイメージ画を示して、支援を呼びかける江上英樹さん(左)と、たこぱいそんさん。手前の3段式スイッチバックのジオラマも、江上さんが製作した=2024年12月14日午後1時50分、島根県雲南市木次町、中川史撮影
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 利用者の低迷で存廃が取り沙汰されているJR木次線(松江市―広島県庄原市)を舞台に、新作漫画を制作して存続への応援をしようと、漫画家たちが目標額300万円のクラウドファンディングを始めた。開始3日目で集まったのは87万円余。目標に達すれば、木次線を舞台にした描き下ろしのコミックスを作る原稿料や印刷・製本代などに充てられる。

 発起人は漫画制作会社「部活」(東京)の代表で、漫画編集者の江上英樹さん(66)。小学館で「ビッグコミックスピリッツ」などの漫画を約30年担当し、独立した。鉄道ファンでもあり、特に急勾配を列車が上るためのスイッチバックに心ひかれてきた。中でも木次線の出雲坂根駅(島根県奥出雲町)近くにある「3段式」は日本最大級で、同様に日本最大級のループ式道路「奥出雲おろちループ(国道314号)」と相まって、江上さんは「インフラツーリズムの聖地」と言う。

 2年前には奥出雲鉄の彫刻美術館(奥出雲町)で「鉄道マンガ展」を開催した。しかし、昨年11月に木次線を代表するトロッコ列車「奥出雲おろち号」が運行を終了。今年6月にはJR西日本の山陰支社長が、スイッチバック区間を含む出雲横田(奥出雲町)―備後落合(広島県庄原市)間のあり方を議論する場が必要と島根県に伝えるなど、木次線の存続の危機が高まっている。

 作品は、舞台を出雲坂根のスイッチバック中心にしつつ、雲南市、奥出雲町など沿線の魅力をちりばめ、読む人が「木次線に乗ってみたいな」「雲南市や奥出雲観光に行ってみたいな」と思えるような物語を目指す。「頑張る少女たちの姿をメインに、沿線の風土を反映させつつ、これまで木次線が運んできた歴史を垣間見ながら、広くローカル線の未来を照らすものにしたい」という。

 漫画家は鉄道ファンでもある「たこぱいそん」さん、原作協力として「ごとう隼平」さん、編集は江上さんらが務め、「プロ漫画集団が全身全霊をかけて挑む」。88年目の木次線全通記念日に当たる2025年12月12日の完成を目指すという。

 支援の幅は「お気持ち応援」(3千円)から、「コミックス1冊と氏名の掲載(希望者のみ)など」(1万2千円)、ほかにも完成イベントへの招待付き、直筆イラスト入りサイン色紙付き(いずれも別途システム利用料)など、様々な返礼品がある。

 受け付けは来年1月31日午後11時まで。詳細は公式ホームページ(https://readyfor.jp/projects/sakanecomic別ウインドウで開きます)へ。

共有