1972年の札幌オリンピックの会場にもなった札幌市西部の手稲山(1023メートル)は、散策やスキー、ゴルフなど、年間を通して多くの人が訪れる人気スポットだ。
ふもとには住宅街が広がり、JR手稲駅の1日の乗車人数は北海道のJR駅で4番目に多い約1万3千人。札幌と小樽をつなぐ高速道路「札樽自動車道」も伸び、周辺では北海道新幹線の工事も進む。
そんな山腹でいま、大規模な地すべり発生の可能性が危惧されている。
国は今年2月、約189ヘクタールを「地すべり防止区域」に指定。5月下旬には国と道が学識者5人による委員会を立ち上げ、対策に向けた検討を加速させている。
地すべり被害 各地で
道によると、地すべりとは、融雪や連続的な降雨、河川の侵食、地震などによって斜面の一部あるいは全体がすべり落ちる現象を指す。
いったん動き出すと完全に停止させることは非常に困難とされ、事前防災の観点から「地すべりの原因となる地下水位を下げる」「杭を打ち込むなどして強制的に地すべりの動きを止める」といった対策工事が各地で行われている。
1985年に長野市の市街地に近い地附山で発生した大規模な地すべりでは、約25ヘクタールの斜面が山裾に向かってすべり落ち、住宅は55棟が全壊・半壊。老人ホームの26人が犠牲となるなどした。
2004年に新潟県を襲った中越地震では、大規模な地すべり・斜面崩壊が3800カ所近くで発生し、甚大な被害となった。中でも旧山古志村(現・長岡市)は道路の寸断で全ての集落が孤立。巨大地すべり(高さ32m、最大長320m、最大幅168m)で川がせき止められて水位が上昇し、半分以上の世帯が水没した集落もあった。
手稲山では、どんな状況が想定されているのか。
検討委員会の配布資料による…