野球熱が高い沖縄がいま、さらに盛り上がりを見せている。
今夏の全国高校野球選手権大会で沖縄尚学が初優勝した。また、地元では高校日本代表が連覇を狙うU18(18歳以下)ワールドカップの開催が決まっていたこともあり、高校日本代表―沖縄県高校選抜の壮行試合(2日、沖縄セルラースタジアム那覇)は予定していたチケットが完売。追加販売分も即日で売り切れた。
8月31日に同球場であった大学日本代表との壮行試合では、沖縄水産の投手として2年連続で全国選手権準優勝に貢献した元プロ野球選手の大野倫さん(52)が始球式を務めた。
大野さんは「(沖縄尚学を)県民の1人として応援していた」と話し、「我々大人が誇りを持ち、おじい、おばあは泣いて拍手した。世界大会も開かれるので、今年は沖縄の年でいいかな」と笑った。
大野さんは「野球未来プロジェクト」を運営するNPO法人の理事長として、保育園や小学校で野球の普及活動に取り組んでいる。
沖縄尚学が優勝してから間もないが、さっそく「変化」を感じているという。
「野球人口の減少と言われているなかで、沖縄尚学の活躍で『ぜひうちの学校に教え手に来て下さい』という問い合わせが増えている」
中体連のデータによると、沖縄での軟式野球(男子)の競技人口は2024年度が2444人で、10年前と比べて2千人超の減少となった。
競技の多様化が進む一方で、大野さんは、中学に入るまでの野球人口を増やす活動に力を入れている。
沖縄尚学の優勝後、「子どもたちが夢を語りだした、という声を直接聞く」と明かした。
2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、大谷翔平らの活躍によって日本中が熱気に包まれた。今回、同じ侍ジャパンのユニホームを着た若い選手が、目の前でプレーすることに意味があると考える。
8月30日に糸満市で開かれた野球教室では、高校日本代表の選手たちが子どもたちの指導にあたった。
小学生で野球教室に参加したことがあるという末吉良丞(2年、沖縄尚学)は「こういう場に来てくれた子に野球の楽しさを知ってもらって、成長していく中で野球をやってくれたら」。
あこがれの選手たちを見て、また夢を持つ子どもが増える。
そんな好循環が、沖縄で生まれつつある。