山形大は3日、蔵王国定公園の特別保護地区にある国有林で、樹氷の元になる針葉樹オオシラビソの枯損木56本を、同大学術研究院の教員(農学部主担当)が無断で伐採していたと発表した。
発表によると、教員は今年10月、蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅周辺の国有林で、山形森林管理署の許可がないまま伐採した。立ち枯れが広がるオオシラビソを研究しており、申請書を提出したが受理されていなかった。秘書広報室の担当者は「受理されたと勘違いした可能性はあるが、詳細は確認中」と説明している。
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山形森林管理署によると、10月下旬、巡回中の署員が標高1600~1700メートルほどの国有林で、伐採している現場に遭遇した。調べたところ、必要な許可を得ていないことが判明したという。
教員は今年4月、同管理署を訪れ、申請書を提出しようとしたが、内容に不備があったため、受理されなかった。その際、同管理署は教員に対して、必要があれば再度申請するよう伝えたという。
担当者は「教員は申請が必要なことは理解していたはず。どういう経緯で伐採したのか」と話した。伐採された本数については管理署としては確認しておらず、今後調査して対応を検討する。
山形、宮城両県にまたがる蔵王連峰のオオシラビソ林は虫による食害などを受け、枯死が広がっている。山形県では官民連携で「樹氷復活県民会議」が設置され、自生する稚樹を山頂付近に移植するなどの取り組みが進められている。
山形大の玉手英利学長は「多大なご迷惑をおかけし、深くおわびする。このような事態が生じたことを厳粛に受け止め、全ての教員が高い研究倫理観を保持し、法令を順守することを徹底する」との談話を出した。