猛暑や豪雨、豪雪など日本でも頻発する異常気象。それらに地球温暖化がどれぐらい影響しているのかを発信する「極端気象アトリビューションセンター(WAC)」が発足した。東京大と京都大の研究者が5月に立ち上げ、特定の異常気象から数日での発信をめざす。
メンバーは東京大大気海洋研究所の渡部雅浩教授、今田由紀子准教授、高橋千陽特任助教、京都大防災研究所の森信人教授、竹見哲也教授の5人。分析結果をウェブサイト(https://weatherattributioncenter.jp/)に公表する。
世界の平均気温は2023年と24年、2年連続で観測史上の過去最高を更新。24年は産業革命前からの気温上昇が1.5度を超え、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」のもとでめざす目標を初めて上回った。
温暖化が化石燃料の使用など人間の活動が原因であることは、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」など世界の研究者らによって科学的に証明されてきた。
一方で、50年以上前も猛暑や集中豪雨はあった。近年の異常気象も温暖化の影響ではなく、たまたまの自然変動の可能性も考えられる。
高橋さんは「個々の異常気象はあくまで大気の偶然の揺らぎで発生するもので、『温暖化のせいですか』という質問に科学的に答えるのが難しかった」と話す。
そこに登場したのがイベントアトリビューション(EA)という手法だ。
スーパーコンピューターを使い、温暖化した実際の地球と温暖化していないと仮想した地球を再現。シミュレーションを繰り返し、それぞれの異常気象の発生確率を比べることで、温暖化がどのぐらい影響したのかがわかるというものだ。
例えば、記録的な猛暑となった昨年7月、日本上空約1500メートルの気温は1950年以降で最も高かった。太平洋高気圧が持続的に強まり、近海の海面水温がかなり高かったことが考えられる。
EAでシミュレーションすると、この時期の日本上空の気温が昨年を上回る確率は、温暖化した状況では21.3%だが、温暖化がない場合はほぼゼロ(0.0064%)と推定された。つまり、温暖化がなければ記録的猛暑は起こりえなかったという結果だ。
記事後半では過去の日本の異常気象における研究成果も紹介します。
情報発信に工夫
EAは15年ほど前に英国で…