Smiley face

 時代ごとに名作ドラマが生まれ、名セリフが多くの人の心に刻まれてきました。その言葉は、時に生き方や時代背景を映し出し、時に視聴者の人生にも影響を与えます。夏の話題のドラマを見渡してみると、磯村勇斗、綾瀬はるか、林遣都といった俳優陣が、印象的な言葉を残しています。放送担当の記者たちが座談会を開き、そんなセリフの持つ意味、背景などを探りました。

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“スカートはだめだな。想像以上にスースーする”

「僕達はまだその星の校則を知らない」(フジテレビ系、月曜10時)

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「僕達はまだその星の校則を知らない」第2話から。出演する磯村勇斗(右)と堀田真由=関西テレビ提供

座談会のメンバー

岩本修弥(30)、女屋泰之(33)、滝沢文那(37)、西田理人(32)、松本紗知(38)、宮田裕介(35)

 岩本 舞台は男子校と女子校が合併直後の私立高校で、法的な観点から学校に助言などをする「スクールロイヤー」が主人公のドラマです。主演は、弁護士の白鳥健治を演じる磯村勇斗さん。脚本は大森美香さん。

 西田 第1話は、制服とジェンダーの問題を扱いながら、学校における自由と秩序をどう考えるかという内容でした。

 ある日の全校集会で、生徒会副会長の女子生徒がスラックスを、生徒会長の男子がスカートをはいて登壇し、驚かれます。2人はそろって不登校になるのだけど、その後、生徒会長が副会長に「学校に来いよ」と電話をかけるシーンがある。そこで「明日何着ていく?」と聞かれて、生徒会長が口にしたセリフです。

 一見、軽口のようですが、彼は「他人にどう見られるか」よりも、「自分がはいて寒いから嫌だ」と言う。これは「君が自分で選ぶことを、僕は支持する」というメッセージだと思いました。それが結果的に女子生徒の励ましになっていると思います。

 松本 多様性をフラットに描こうとしていることにも好感が持てます。生徒たちが私服もOKになるよう校則を変えることを訴え、学校の理事長(稲垣吾郎)たちと模擬裁判をしますが、理事長は制服によって貧富の差が見えにくくなることなどを指摘する。意見を出し合った後の生徒のアンケート結果では7割が「変えなくていい」と回答するという、一筋縄ではいかない現実も描く。脚本が巧みだと思いました。

“ザワザワの色もガッカリなままで、僕は何も分かってないし、何も解決せず、何も変わらなかった。なのに美しかったんだ”

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「僕達はまだその星の校則を知らない」第1話から。生徒会長を演じる日高由起刀(右)と生徒会副会長を演じる南琴奈(中央)=関西テレビ提供

 西田 主人公のこの言葉も好きです。説明調で分かりやすさ重視のセリフが多すぎるとも感じる昨今のテレビドラマにおいて、こういう謎めいた言い回しはもはや貴重とさえ言えるかもしれない。リズムも良くて詩的な響きがあります。主人公は宮沢賢治がモチーフになっていますが、「ムムス」という本作オリジナルの造語も含め、賢治的な要素をうまく作品に反映していますよね。

“ほんとうのさいわいっていったいなんなんでしょうね”

 女屋 私は物語のカギを握り…

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