小児科医ふらいと先生に聞く
様々なジャンルの「プロ書き手」によるニュースレターが配信される外部媒体「theLetter」で2024年9月8日に配信された記事です。今回は読者からの質問に回答する内容です。
今回もQ&Aです。
甘いもの好きと子どもの糖尿病
いつもありがとうございます。子供の甘いもの好きと糖尿病その他疾患との関係について質問です。3歳息子が離乳食の頃からお茶と水を拒否し、ミルクを卒業した後はジュースしか飲んでくれません。ジュースは3倍程度に薄めています。平常からヨーグルトなど甘いものが大好きで、このまま続くと糖尿病やその他疾患にならないか心配でなりません。どうかご教示いただけませんでしょうか。
確かに甘いもの好きな子どもは一定数いて、親としてはそんな心配をするのはとても気持ちがわかります。
まずは、一般的な話として、砂糖入り飲料を飲み続けると糖尿病になるかという話をします。
2024年3月に米国シカゴで行われた米国心臓病学会で、マサチューセッツ州の子ども500人を対象とした小規模な長期研究の結果が報告されました。
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この結果、幼少期に甘い飲み物を定期的に飲むと、子どもの2型糖尿病マーカーの発症リスクが高くなることがわかりました。
これは幼少期に甘い飲み物を毎日1杯飲むと、インスリン抵抗性が34%増加し、空腹時血糖値が5.6mg/dL増加し、青年期のHbA1c値が0.12%増加するという関連性があったというものです。
「theLetter」とのタイアップ企画
様々なジャンルの「プロ書き手」によるニュースレターが配信される「theLetter」と朝日新聞がタイアップして、一部コンテンツを配信します。この連載では小児科医「ふらいと先生」が執筆するニュースレターから、子どもの健康や医療に関連する記事を配信します。
インスリン抵抗性という言葉は、聞き慣れないかもしれません。糖分を取ると、血液中に糖分が流れていきます。そこで、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンは、血液中の糖分値を下げるために細胞に糖を取り込ませる役割を持っています。
インスリン抵抗性とは、細胞がインスリンに反応する度合いなので、インスリン抵抗性が増加すると言うことは、細胞がインスリンと糖を自らに取り込ませないようになると同じ意味です。
つまり、この研究結果は予備的なものではありますが、砂糖を添加した飲料は、子どもの2型糖尿病の長期的リスクがあるのです。
では2~3歳の時期は放っておいて、5~6歳の時期に気をつければいいのでは、という意見もあるかと思います。しかし、そう簡単には行きません。
カナダで2008年~2017年に行われた研究では、子ども999人を対象に2.5歳以下の砂糖入り飲料を飲む習慣が、5~9歳でどのような影響を与えていたかを検証しました(#2)
この結果によって、2.5歳以下の砂糖含有飲料の毎日の摂取量は、その後の幼児期(5~9歳)の摂取量の増加と強く関連していることが示されました。
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小さい頃に甘いものが好きな子は、少し大きくなっても甘いものが好きであることを証明した結果となりました。これは、初期の砂糖摂取習慣が持続し、長期的な糖尿病リスクが増加する可能性があることを示唆しているのです。
米国では2~18歳の子どもには、1日あたり25g(小さじ6杯)未満の砂糖の摂取を推奨しています。結構厳しいですよね。これは、実際に米国の子どもの2/3がソーダ、レモネード、エナジードリンクを少なくとも1日1杯は飲んでいるという背景もあるので、そういったことを考慮した結果かもしれません。日本はお茶を飲む文化があるので、米国ほど問題にならないのかもしれませんが。
最後に大切なことは、子どもの糖尿病は甘いもの好きなだけで発症するわけではありません。遺伝、全体的な食事、運動などの活動レベルなどが影響をすることは明らかです。
甘いものを過剰に摂るのは、あくまで危険因子なので、バランスの良い食事と運動を心がけていきましょう。
参考文献
#1. American Hearth Association Epidemiology and Prevention (2024). Sugary drinks, fruit juices linked to higher risk of developing Type 2 diabetes among boys. https://newsroom.heart.org/news/sugary-drinks-fruit-juices-linked-to-higher-risk-of-developing-type-2-diabetes-among-boys (2024/9/7 最終閲覧)
#2. Ziesmann A, et al. The Association between Early Childhood and Later Childhood Sugar-Containing Beverage Intake: A Prospective Cohort Study. Nutrients 2019:11(10): 2338
子どもの筋トレ
いつも興味深くためになる記事をありがとうございます。毎回楽しみに読んでいます。小3の息子がいます。何でもよく食べ健康ですが、食べる量の割には身体が細くシュッとしています。スポーツをしているのもあり筋肉をつけたく腕立て伏せやダンベル(1kg)などをしていますが、子どもの筋トレはどんなやり方が良いのでしょうか?そもそもやらない方がいい、というような事実があれば教えていただきたいです。
子どもの筋トレですね。自分も小学生の頃、友達が筋トレにハマっている子がいて、これはどうなのだろうと内心思っていました。
これは実際に研究を調べてみて…