上半身を裸にされた1人の女性が、モノクロ写真の中にいた。
乳房を隠そうとするかのように、腕を十字に組んでいる。口元はぎゅっと閉じられている。
「私の母に似ている。どんなに屈辱だったか……」
写真を手に取った三好真由美さん(62)=松山市=の目尻には、涙がにじむ。
写っている女性は、三好さんの曽祖母・政石コメさん(1878~1941)。写真は、生前のコメさんの容姿を今に伝えるたった一つの手がかりだ。
【連載】ハンセン病 疑惑の解剖記録
岡山県の国立ハンセン病療養所で見つかった約1800人分の解剖記録の一部から、不可解な記述が数多く見つかりました。各地の療養所で実施された解剖は多くの問題をはらんでいました。新たな実態が浮かび上がります。
- 解剖の本人同意に死後の日付 捏造の可能性 岡山のハンセン病療養所
ハンセン病を患っていたコメさんは1940(昭和15)年5月、家族を残したまま、岡山県沖の長島(現・瀬戸内市)にある国立ハンセン病療養所「長島愛生園」に強制収容される。
その約8カ月後、自分の存在を消すかのように真冬の海に入り、自死する。
三好さんは愛生園にコメさんについて情報公開請求し、2023年の夏、資料が開示された。
家が真っ白になるほど消毒され
写真はその中にあった。曽祖…