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 ベルギーでは、精神科病院を退院後に地域で暮らす人たちを医師、看護師、ソーシャルワーカーら多職種の専門家が訪問する「モバイルチーム」を通じて支援。就労や家事支援など必要とされる様々なサービスにつなげている。

私が私であるために~ベルギーの精神医療改革⑤

日本と同じように、精神科医療を多くの民間病院が支えているベルギー。「本人中心」の理念をもとに地域医療へと軸足を移し、長期の入院を減らそうとしています。どんな取り組みなのでしょうか。日本の医療・福祉分野の関係者とともに現地を訪ねました。

 こうしたベルギーでの精神科医療改革について、2024年10月に現地を視察した「未来の風せいわ病院」(盛岡市)の運営法人理事長を務める智田文徳医師(52)は、「日本と同じように民間病院が多いベルギーで、本人を中心に、リカバリー(回復)志向の支援がすみずみにまで浸透していることに驚いた。一気に同じようにはできないが、今ある仕組みを工夫する余地はあると思う」と話す。

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ベタニエ精神科病院の職員(手前)の説明を聞く智田文徳さん(右端)ら=ベルギー・ズーアーセル、森本美紀撮影

 日本では、精神病床の入院患者は約25万5千人で、その約6割が1年以上の長期入院となっている。障害者分野に詳しい佐野竜平・法政大教授がまとめたデータによると、経済協力開発機構(OECD)の統計などをもとにした21年の平均在院日数はベルギーが約9日なのに対して日本は約275日。統計がある加盟国中で最も長い在院日数となっている。また、1千人あたりの精神病床数(21年)はベルギーが1.41で、日本はその1.8倍の2.58だった。

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主な国の精神病床における平均在院日数

取り組み「臨界点に達した」

 未来の風せいわ病院では、医…

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