Smiley face
写真・図版
地方移住が社会にもたらす影響について語る作野広和教授=2025年5月21日、松江市、高木文子撮影

 都市部から地方への移住の関心が高まり続ける中、東京からアクセスの良い地域が人気を集める傾向が鮮明となっている。地理的条件に関わらず「選ばれる」地域になるには何が求められるのか。地域づくりに詳しい島根大の作野広和教授に聞いた。

 ――移住の相談件数が年々伸びています。

 大都市圏の住みづらさは常々言われてきましたが、ここ10年ほどで、地方移住が選択肢として定着してきた印象です。

 要因としては、まず企業が多様な就業のあり方を整備してきたことが挙げられます。コロナ禍をきっかけにリモート会議やリモートワークが普及しました。オフィスや学校、自宅にもワイファイが整備されています。

 また、以前は営業や販売といった職種は、人に会わないと商売になりませんでした。アフター5の付き合いも大事でした。今は若者のコミュニケーションのあり方が変化して、こうした働き方も変わってきています。

 地域おこし協力隊が地域に及ぼした影響も大きいと思います。よその地域から人材が入っていくには「口実」が重要です。協力隊は国の制度なので、有無を言わさず入っていけます。テレビドラマにもなって存在が知られるようになりました。

  • 移住と言えば現役世代、子育て移住も増 重なるショック変えた価値観
写真・図版
田園風景=2025年5月14日、秋田県上小阿仁村、高木文子撮影

「選ばれない自治体」もできてしまう構造

 ――昨年の「移住希望地ランキング」(東京・有楽町のふるさと回帰支援センター)で、群馬、静岡、栃木がトップ3に入りました。

 2020年ごろまでは、移住といえば大都市から離れたところ、「がつんと遠くに行きたい」と希望する人が目立ちました。最近はどこの地域も移住者を受け入れるようになって、移住を希望する人の多くも「田舎だったらどこでもいい」と考えているようです。

 人口の多い首都圏の動向が、地方移住のトレンドを形成しています。東京からそんなに遠くなくて、自然にふれあえて、居住環境がよい地域が選ばれます。大きい買い物は月1回くらいだから、ほどほどのペースで都会へ行ければいい。そんな地域を求めると群馬、栃木などになるのではないでしょうか。

  • 転職せずに移住したい…人気トップの群馬、二つの家族をとらえた魅力
写真・図版
2024年移住希望地ランキング

記事の後半では、どのような地域が移住者に選ばれるのか、作野さんの見解を紹介します。

 ――都市部から地理的に遠い地域は、選ばれにくいのでしょうか。

 地理的な要因が関係しないこ…

共有