米トランプ政権が中国に関税戦争を仕掛け、両国の関係は不透明さを増す。米中間の競争を「いまが決定的な10年」と位置づけたバイデン前政権で、国家安全保障会議(NSC)中国・台湾担当副上級部長を務めたラッシュ・ドーシ氏に対中政策の行方を聞いた。
――あなたが対中政策の起草や交渉の中枢を担った米国のバイデン前政権は2021年の政権発足後、米中間の競争において「いまが決定的な10年」と位置づけてきました。
「21世紀が『中国の世紀』になるのか、『米国の世紀』になるのか、という問題です。米国が経済的に中国に依存し、技術的に後れを取り、台湾海峡、南・東シナ海で軍事的に敗北してしまうのか。国際システムが民主主義にとって望ましいものになるのか、中国のような権威主義に近いシステムとなるのかという問題でもあります。個人のレベルでも、日本国民であれ米国民であれ、過去と同じように繁栄を維持し、外部からの圧力や権力から自由であり続けられるのか、がかかっています」
「一方で、中国共産党とのイデオロギーをめぐる対立は米中対立の一つの要因であっても、最大の要因ではないと思います」
前例のない高関税、目的は
――トランプ政権の対中政策を、これまでの政権とどう比較しますか。
「トランプ大統領は16年の大統領選以来、米国の利益を守るためには中国との競争が必要だという超党派の合意形成を促進しました。しかしトランプ氏自身は、中国との大きな取引や譲歩に前向きでした」
「それまでとの大きな違いが…