米航空機大手ボーイングの旅客機「737MAX」が各地で起こした墜落事故をめぐり、米司法省は23日、同社を不起訴とする内容の合意を同社と交わしたと発表した。バイデン政権下では、同社が有罪を認める内容の司法取引の成立に向けて動いていたが、刑事責任を問わない方針に大きく転換した。
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今後、裁判所が合意内容について判断する。
発表によると、合意書には、罰金4.9億ドル(約695億円)や、被害者の基金への4.5億ドル(約634億円)の寄付など、同社が計11億ドル(約1569億円)を支払う内容などが盛り込まれている。
米メディアによると、同省は声明で「この解決策が実用的な利益をもたらす最も公正な結論だ。ボーイングに経済的な責任を負わせ、遺族に決着と補償を提供し、今後の航空利用者の安全に影響を与えられる」としている。ボーイングは朝日新聞の取材に「この件についてはコメントしない」とした。
反発する遺族も
複数の遺族から反発が出ている。28歳の娘を亡くした遺族は「大企業は人を殺しても法と正義の上に立つのだという(誤った)メッセージを送っている」とコメントを出した。別の家族の代理人弁護士は「遺族は、今回の合意を却下するよう裁判所に求める予定だ」としている。
737MAXは2018年にインドネシアで、翌19年にエチオピアで計2機が相次いで墜落。計346人が死亡した。同社は737MAXの型式証明にあたり、事故原因となった飛行システムの安全性などについて米航空当局を欺いたとされていた。
同省はバイデン政権下の昨年7月、同社が有罪を認める内容の司法取引で合意していたが、同年12月にその内容をめぐって裁判所に却下されていた。