Smiley face
写真・図版
強制入院させられた江口実さん。記者会見で思いを語った=2025年8月7日、東京都千代田区、高橋淳撮影

 健康な状態なのに精神科病院に強制的に入院させられた――。そう男性が訴えた裁判で、病院側の対応を「違法」とする判決が出た。自分の意思とは関係なく強制入院させられている人は全国で約13万人にのぼり、入院のあり方を見直すべきとの声もあがっている。

 「あきらめしかなかった。妻が救出に動いてくれなければ、今も外に出られなかっただろう」

 富山市の江口実さん(83)は精神科病院に強制入院させられていた当時の状況を、こう振り返る。

 2018年12月の早朝、当時経営していた高齢者福祉施設で、妻と一緒に利用者の朝食を準備していた。そこにいきなり侵入してきた見知らぬ男4人に羽交い締めにされた。男らは民間救急業者のスタッフだった。そのまま車に乗せられ、約400キロ離れた宇都宮市の精神科病院「報徳会宇都宮病院」に連れていかれた。

 そこで高齢の医師から問診を受け、「『酒を飲んで暴れるのか』などと身に覚えのないことを一方的に言われた」。「老年期認知症妄想型」と診断され、そのまま強制的に「医療保護入院」となった。だが、実際にはそんな症状はなかったという。

 医療保護入院の対象は精神障害者で、精神保健指定医が必要と判断し、家族などが同意すれば入院させられる。本人の意思は無関係だ。

 江口さんが無理やり入院させ…

共有