岸田文雄首相が8日から米国を訪問する。国賓待遇での訪米は2015年の安倍晋三元首相以来、9年ぶり。バイデン米大統領との首脳会談などに加え、米議会での演説に臨む。国内では自民党派閥による裏金事件が政権を直撃し、内閣支持率は過去最低水準で推移する。注意深く、私は目をこらしたい。窮地に立つ首相が、果たして訪米で何を得ようとするのか、に。
9年前の4月29日午前、米・ワシントンの米連邦議会の上下両院合同会議。時にジョークを交えて笑いを誘い、戦後日米の「和解」の歩みを、独特の抑揚と緩急で演説する安倍氏の姿を、私は議場上階の記者席から見つめていた。戦後70年の節目に安倍氏は、日本の首相として4人目、54年ぶりの米議会演説に臨んでいた。
当時、担当していた岸田外相に同行し、議場での傍聴の機会を得た私は、安倍氏の演説よりも、議場に集まった米国の議員が演説の「どこ」に反応するかに、とりわけ注意を払っていた。
演説開始から30分を過ぎた…