「りんごかもしれない」「なつみはなんにでもなれる」などで知られる絵本作家のヨシタケシンスケさん(51)。7月23日から大規模展覧会「ヨシタケシンスケ展かもしれない」が横浜市で開かれている。会場のそごう美術館(横浜市西区)を訪れたヨシタケシンスケさんに、絵本や展示に込めた思いを聞いた。
――展示やヨシタケさんの絵本には子どもの「あるある」が詰まっています。なぜ子どもの気持ちがわかるのでしょうか。
子どもの頃の自分に向けて描いている部分があります。また、父親として2人の子どもを育てていると、子どもも同じことをやっているんです。教えてもいないのに。自分が子どもの頃に知りたかったことは、この子たちにも知りたいものなんだっていう裏が取れ、商品としてある程度の人に共感してもらえるものなんだって分かって初めて絵本にすることができました。
――デビュー作の題材が、家にあるりんごだったり、「冒険に行ってこよう」と主人公が出かけた先が近所だったり。作品では日常を舞台にしています。
非日常の努力と友情と勝利……みたいなお話は他にたくさんあります。自分なら、努力も友情も勝利もないような主人公がおもしろおかしく過ごしている姿を見たらほっとすると思うんです。「おれと一緒のやつが楽しそうにしている」って。才能もないし、努力もないし、反省もしないし、同じ失敗ばかりしている子たちが、おもしろい、ちっちゃな発見で喜んでいる姿が本として成立するなら、その本を読む全ての子どもたちが主人公になれるっていうことの証拠じゃないかな、と。自分が子どもの時にそういう本を読んだらうれしいんじゃないかな、って思ったんです。僕みたいなへそ曲がりの人間はどういう話だったら納得できるんだろうかっていうのを考えた時に出てくるのが僕の絵本だと思います。
「イラッとしているお母さん」を描くわけ
――作品に出てくる親、特に…