(18日、第107回全国高校野球選手権茨城大会3回戦、水戸葵陵3―2土浦三)
あと1球ストライクが入れば、勝利だった。
九回表2死走者なし。カウントは3ボール2ストライク。四回から継投した土浦三の黒田広将(3年)は勝利を目前に焦りが出た。四球となり、走者を出す。さらに、足がつり出した。次打者に得意の直球を投げたが、真ん中に入り適時二塁打を浴びて同点に。次打者にも適時打を打たれ、勝ち越された。
昨秋の新チーム発足以降、チームメートから「黒田のチーム」と言われてきた。投打で主力の「二刀流」。春の県大会では2本塁打を放ち、チームを8強に導いた。
ただ、けが続きだった。筋肉の炎症のほか、指を痛めた。監督やコーチにも言っていないが、肩の調子もよくない。
今大会は池田翔(3年)が背番号1を背負い、競い合ってきた。この日先発し、3回を無失点に抑えた池田は「いいライバル。黒田が打たれたら悔いはない」と言い切る。
黒田が交代でマウンドに行くとき、ベンチで池田が「任せた」と声をかけた。黒田は「任せろ」と返答した。切磋琢磨(せっさたくま)してきたライバルの思いが力になった。
九回裏1死二塁。打席に立った黒田は申告敬遠だった。「みんなが返してくれる」と祈ったが、ゲームセット。ヘルメットを取り、空を仰いだ。
遠かった一球。でも、涙を流しながらも、こう思えた。みんなで追いかけた白球。「やりきりました」