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シュートを外した2年生選手に駆け寄る佐藤櫂斗選手=2025年8月6日午後2時56分、岡山県総社市、棟形祐水撮影

 岡山県で開かれている全国高校総体の男子ハンドボールで、全国屈指の強豪・駿台甲府(甲府市)は、2連覇を逃した。6日の準々決勝、氷見(富山)戦は延長でも決着せず、決戦方式の7メートルスローコンテストに。5人目の2年生がシュートを外し、勝負はついた。

 「お前は悪くないから」「大丈夫、大丈夫」

 シュートを外してうずくまる後輩に、佐藤櫂斗(かいと)選手(3年)が顔を寄せて声をかけた。立ち上がれない後輩の肩を抱き、整列に付き添った。

 全国からスター候補が集まるチームにあこがれ、塩山中学(山梨県甲州市)から進学した。身長183センチ、体重90キロという大柄な体格を生かし、「相手を振り回せるパワーが魅力」(八田政史監督)。攻守の起点になる「ピボット(ポスト)」と呼ばれるポジションで、準々決勝でも敵陣をかき回した。

 走力を重視するチームだが、入学時の50メートル走のタイムは7秒台後半。スピードにはあまり自信がなかった。

 立ちはだかったのが、コートを選手全員でダッシュする「125回往復シャトルラン」だった。「試合に出る選手はみんなクリアしてきた」(八田監督)という伝統の練習だが、入学時は半分もできなかった。

 ただ、八田監督は、コツコツと努力する姿を見ていた。「いつかクリアしてくれるはず」。2年夏に初めて完走。50メートル走は7秒台前半まで上がり、持ち前のパワーにスピードも加わった。

 八田監督は、接触プレーのたびに「相手を思いやりすぎているように感じていた」。時にプレーに影響を与えていた「優しすぎる性格」だったが、数々の強豪と対戦するうちに、徐々に当たり負けしない激しいプレーも身につけた。

 練習でも学校生活でも、エースで司令塔の小路凰太選手(3年)と一緒だった。「試合中に顔を見たら、どういう位置取りを求められるか分かる。学校の休み時間も一緒にいるくらいなので」

 昨年、駿台甲府は全国優勝経験のある東京・東久留米市立西中出身の選手を中心に「高校3冠」を成し遂げて注目を浴びた。今年のメンバーでも、小路選手は神奈川、主将の清水大地選手(3年)は長野、守護神のゴールキーパー石橋晴波選手(2年)は北海道など高校総体登録選手のほぼ半数は県外出身だ。地元を離れて競技に打ち込むライバルの姿は「刺激になっていた」と言う。

 2年生には、現チームで主力を担う野沢俊介選手、雨宮寛汰選手ら県内出身者も多い。「自分が入学した時は全国クラスの選手に気後れした。でも、(県出身の)後輩たちの実力は引けを取らない。堂々とチームを引っ張って欲しい」。達成できなかった「高校3冠」の夢を、後輩たちに託す。

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駿台甲府、高校総体の戦績

(2回戦)

駿台甲府 34―26 小林秀峰(宮崎)

(3回戦)

駿台甲府 25―22 学法石川(福島)

(準々決勝)

駿台甲府 43―44 氷見(富山)

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