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独自のえさで育てられている松阪豚=2025年6月10日午後4時0分、三重県松阪市田村町、安田琢典撮影
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 超高級黒毛和牛「松阪牛」やB級グルメの鶏肉みそ焼きで知られる三重県松阪市に、市場での評価がじわじわと高まっている「別の肉」がある。市内でひっそりと繁殖、肥育されていたが、事業を引き継いだ女性経営者が「世界に一つしかないブランド」として積極的に発信している。

 その名は「松阪豚」。一般社団法人「日本養豚協会」を立ち上げた山越弘一さん(86)が独自の技術で複数の品種を交配したオリジナル品種だ。

 一般的な配合飼料ではなく、高たんぱくの穀物と大豆に酵母や乳酸菌を混ぜた独自のえさを使う。弾力のある桜色の肉は美しく、脂の部分は手のひらに乗せると溶けてしまうくらいまろやか。臭みもなく、あくがほとんど出ない。

 通常の豚は生後160日前後で出荷されるが、松阪豚は210日ほどかけてじっくりと育て上げる。筋肉質で、円筒に近い体つきになる。同市田村町の豚舎でのみ育てられており、44頭いる母豚から生まれる年間700~800頭を出荷する。

 実は、松阪豚は「廃業」の危機に直面していた。山越さんに後継者がいなかったからだ。

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