Smiley face
写真・図版
白岩玄さん

 「イクメン」という呼び名は役割を終えたとして、厚生労働省はプロジェクト名を「共育(ともいく)」に変更しました。小説家の白岩玄さんは、男性の生きづらさや、シングルファーザー同士の共同生活を描く中で男性による育児をつづりました。イクメンとは何だったのか。自身の経験も踏まえて、思いを聞きました。

感情がびっしり詰まった「母親」という言葉

 イクメンという言葉により、育児をする男性が社会に受け入れられるようになった。それは間違いありません。でも本来そこにあった「父親」という言葉が隅に追いやられてしまった気がします。

 「母親」には、育児をめぐる悩みや苦しみ、様々な感情がびっしり詰まっている。女性たちが社会の中で、血の通った言葉をたくさん紡いできたからです。

 対して、父親という言葉の意義を、男性はあまり考えてこなかった。仕事と家庭をどうやって両立すべきなのか。男性社会と言われる世の中で、娘や息子をこれまでと同じように育てていいのか。そういう真摯(しんし)な問いをもっと重ねるべきだった。

 僕自身は2児の父親ですが、イクメンという言葉に居心地の悪さを感じています。

 子どもの世話をする姿を見て…

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