きっと私たちはアイヌの人々の歴史をあまり知らない。なぜなら、彼らは自らの足跡を文字記録や絵にほとんど残さなかったから。ならば、モノの出番だ。このほど刊行の「つながるアイヌ考古学」(新泉社)は物質資料である出土品を手がかりに、北の民の歩みに迫る。
近年、北海道のアイヌ文化への関心が高まっている。先住民族を明記した法整備がなされ、文化振興を図るウポポイ(民族共生象徴空間)も誕生。関連漫画も大ヒットした。ただ、これまでの研究はどこか表層的にとどまり、彼らの考え方や生活にいまひとつ踏み込めていなかったのではないか。筆者の関根達人・弘前大教授は、そう思うのだ。
なるほど、自然を愛し共生する人々といった画一的なイメージは相変わらずだし、いまも身近な存在とは言いがたい。なぜか。ルーツや歴史に不明な部分がいまだ多いのも無関係ではないだろう。自ら史料を残さなかったアイヌの人々は、自分たちを異民族視してきた和人らによって紹介されるほかなく、その実像はゆがめられてきた。「だから、バイアスのかかった本土の古記録よりも物質資料である考古遺物が有効なのです」
改めてアイヌ文化とは、奈良…



