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聖霊高校=愛知県瀬戸市

 愛知県瀬戸市の私立聖霊(せいれい)高校ソフトボール部の主将だった3年生の女子生徒(当時18)が2022年に自殺し、高校を運営する学校法人南山学園(名古屋市昭和区)が設置した第三者委員会が「顧問の不適切な指導が自殺の一因となった可能性がある」と結論づけていたことがわかった。11日、学校が報道陣の取材に応じ、明らかにした。

 学校によると、女子生徒は22年4月19日、部活動を終えて帰宅した後に自殺した。ソフトボール部は21年夏のインターハイに初出場。女子生徒はその後、顧問である男性教諭から任命されて主将になった。

 学校が部員らから聞き取ったところ、女子生徒はチームに問題が起きた際、主将として矢面に立って男性顧問から指導を受けていたという。自殺した当日は打撃練習でミスをし、男性顧問から「お前はもういらない。キャプテンに向いていない」「他の選手に代わったほうがいい」などと言われていた。また、1年生の夏に腰を痛め、思うようにプレーできないことにも悩んでいたという。

「自己の存在価値を否定されたと推認」

 学校側は、聞き取りの結果などを運営法人に報告。遺族からも詳細な調査が求められたため、23年6月に弁護士ら4人でつくる第三者委を設置。第三者委が昨年9月にまとめた報告書は、人間性や人格の尊厳を損ねたり否定したりする発言や行為は許されないとする文部科学省の部活動指導に関するガイドラインなどに照らし合わせ、男性顧問の指導は「不適切だった」と判断した。

 男性顧問は「記憶にない」と否定したが、複数の部員の証言があることから、第三者委はこうした発言があったと認定。「自己の存在価値を否定されたと推認でき、相手を深く傷つける暴言にあたる」とし、不適切な指導が自殺の一因となった可能性があると結論づけた。

 学校によると、男性顧問は「心理の変化に気づけず、フォローができなかったことは反省している」と話しているという。

 女子生徒の自殺後、学校側は指導者を増やすなどの対策を取ったが、男性顧問は報告書が出た後も指導を続け、今年8月に部活動から退いた。報告書がまとまったのは新チーム発足直後で、生徒の動揺を避けるために次のチームに移行する時期まで指導を続けさせたと、学校側は説明している。

当時「事故で亡くなったことにすることも」と学校側提案

 学校側は第三者委員会からその後の対応についても問題を指摘されていた。

 学校側によると、女子生徒の自殺について学校は当時、ほかの生徒への影響を考慮し、遺族に対して「交通事故で亡くなったことにすることもできます」と提案。遺族から「そうですね」と言われ、承諾を得たものと思い込み、ほかの生徒に事実と異なる説明をした。遺族はその後の葬儀のあいさつで自殺を公表したという。この点について学校を運営する学校法人南山学園(名古屋市昭和区)が設置した第三者委員会から昨年9月にまとめた報告書で「遺族の思いに反し、不信感を抱かせることになった」と指摘されたという。

 同校の池田真一(まひと)副校長は「隠蔽(いんぺい)するつもりはなかったが、遺族の思いと乖離(かいり)したものとなり、深く反省し、おわびしたい。第三者委の報告書を真摯に受け止め、今後も遺族とは丁寧に話を進めていきたい」と話した。

 また、学校側は女子生徒の自殺については愛知県私学振興室に22年5月に報告していたが、第三者委の報告書については知らせていなかった。この点について南山学園の担当者は11日、報道陣に「失念していた」と説明。県は9日、自殺などの重大事案は適切に報告するよう県内の私立81校の学校長らに通知を出したという。

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