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刑事クリニックに参加した疋田純平さん(中央)と渡辺紗樹さん=2024年12月6日、東京都渋谷区、金子和史撮影
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 実際に起きた事件の弁護に学生が関わり、法律家になるための力を養う取り組みが各地の法科大学院(ロースクール)にある。プロの弁護士も顔負けの成果を上げる活動もあるが、国内では制約も多く、関係者の模索は続く。

 「罪を認めて反省している」「逮捕容疑は軽微で、勾留すべき事案ではないのでは」

 早稲田大法科大学院3年生の男女4人は今夏、タクシー運転手の70代男性が起こした暴行事件について、東京都内の弁護士事務所で議論していた。

早稲田ローの「刑事クリニック」という挑戦

 男性は運転方法を巡り別の運転手とトラブルになり、頭突きをしたとして逮捕された。弁護士が接見すると、男性は罪を認め、反省していたという。当時のやりとりを記録したドライブレコーダーは、警察が証拠として押収していた。

 刑事訴訟法は、容疑者が罪を犯したと疑う十分な理由があり、逃亡や証拠隠滅の恐れなどが認められる場合、逮捕による72時間の身体拘束や、さらに原則10日間(最長20日間)拘束を続ける「勾留」ができると定める。

 学生らは男性の姉に連絡し、監督を約束する書面を作ってもらった。さらに弁護士を通じ、勾留請求しないよう検察側に求めた。男性は数日後に釈放され、約1カ月後に不起訴となった。

 同大学院の開校以来、20年続く「刑事クリニック」だ。弁護士の教員が引き受けた事件のうち、依頼者の了承を得たものを対象にしてきた。

 開講の中心になったのが同大…

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