My吹部seasons
吹奏楽コンクールといえば、課題曲と自由曲の2曲を12分間以内で演奏し、全日本吹奏楽コンクールを最上位大会とする大編成(55人以内)に注目が集まる。
一方、自由曲のみ7分以内で演奏する小編成のコンクールもある。
全日本に小編成部門はないが、北海道・東北・東関東・西関東・東京・北陸の6支部を突破した代表団体は、最上位大会として東日本学校吹奏楽大会に進める。出場人数は30人以内だ。
大編成を「12分間の青春」とするなら、小編成は「7分間の青春」と言えるだろう。
立教大学の関係校で、キリスト教系の男子校、立教新座高校吹奏楽部(埼玉県新座市)も「7分間の青春」のために練習を重ねてきた小編成バンドだ。10月11日に金沢歌劇座(金沢市)で開催される東日本大会への出場が決まっている。
部員数は18人。服装は自由で、部員たちはポロシャツやTシャツ、ジーンズなど思い思いのファッションで部活に参加している。
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18人で2年連続4回目の東日本大会へ
今年、高3で部長を務めるのは、トロンボーン担当の高添綾我(りょうが)。立教新座中から内部進学した部員だ。綾我はこう振り返る。
「吹奏楽を始めたのは小4のとき。中学に入って初めて小編成を経験したときは、人数が少なくてやりがいを感じた一方、一人ひとりの責任の大きさに緊張しました」
大編成とは違い、小編成では楽器一つずつの音が客席に聞こえてしまう。ソロのように演奏する部分も多くなる。それがおもしろさでもあり、難しさでもある。
高校で初めて楽器に取り組むメンバーもいる立教新座では、たとえ取り組むのが自由曲だけでもハードルはかなり高い。しかも、部活は平日2時間、週休2日と限られている。
そんな状況の中、綾我が高1のとき、立教新座は西関東大会に進出して銀賞を受賞。高2の2025年は西関東大会を突破し、東日本学校吹奏楽大会に出場。銀賞を獲得した。
「去年はまさか西関東大会で代表に選ばれると予想もしていなかったので、東日本学校吹奏楽大会に出場できるだけでもうれしかったです。でも、会場が山形県で、慣れない土地の大きなホールにのまれてしまい、納得のいく演奏はできませんでした」
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悔しさを晴らすべく、26年、綾我は部長として、また、トロンボーン奏者として部を牽引(けんいん)してきた。
自由曲はチェコの作曲家、エルヴィン・シュルホフの《弦楽四重奏のための5つの小品 より 1、2、5》。不協和音、リズムや曲調の移り変わり、高速パッセージなどが含まれる難度の高い曲だ。
立教新座は埼玉県大会を突破し、西関東大会に出場。本番の演奏の際には恒例となっている「付箋(ふせん)作業」をしたと綾我は言う。
「大会ごとに全員がひとつの目標を書いて楽譜に貼るようにしているんです。西関東のときは『ブレスをしっかりとる』と書きました」
会場は山梨県。昨年もそうだったが、慣れない会場だと緊張やプレッシャーで息継ぎが浅くなりがちだ。しっかりブレスして音を響かせよう、という意図を付箋に込めていた。
「でも、演奏は悔しさが残るものになりました。練習どおりにできたところと、うまくいかなかったところがあって……」
表彰式で綾我は代表者としてステージに上がった。
「すごくドキドキしました。西関東代表として学校名がアナウンスされたときは、素直にうれしかったです。ホッとしました」
立教新座の2年連続4回目の東日本学校吹奏楽大会出場が決まった瞬間だった。
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「もうこんな演奏を繰り返したくない」 部長と副部長の二人三脚
西関東大会の表彰式で、副部長でホルン担当の大西結登(ゆいと)は、同期の綾我とともにステージ上にいた。結果が発表されるまで、結登はこんなことを思っていた。
「代表に選ばれるのは厳しいんじゃないか……」
立教新座の名前が呼ばれたときも、うれしい気持ちとともに悔しさが湧き上がってくるのを感じた。
「もうこんな演奏を繰り返したくない」
結登は中1の冬まで父親の仕事の関係で、ドイツのミュンヘンで暮らしていた。帰国後、中学校で吹奏楽部に入り、ホルンを吹き始めた。立教新座には高校から入学した。
25年の東日本学校吹奏楽大会のことを結登はこう振り返る。
「西関東大会で代表に選ばれたのはうれしかったですが、上に進めない学校もがんばってきたはずなので、彼らの気持ちも背負っていかないといけないと思っていました。ただ、東日本大会本番では個々のミスが積み重なり、理想とする演奏にはならなくて……」
綾我と同様に後悔が残る演奏になったと感じていた。
今年はその綾我とともに部を引っ張る立場に選ばれた。綾我はいつも人がまわりに寄ってくるまさにリーダータイプ。自分は全体を見ながら細かい部分に気づいて調整をするようなタイプ。でも、部長不在のときにはリーダーシップをとる。ふたりはお互いに良い補完関係にあると結登は思っている。
26年、《弦楽四重奏のための5つの小品》でホルンを演奏しながら結登は気づいた。
「ホルンはときに主張し、ときに身を引いてメロディー楽器を引き立て、絶対に全体を崩さないようにする立場。いまの副部長としての役割と重なっていると感じました」
副部長という立場が楽器とも重なり合い、自分の持つ強みを生かしながら結登はこの夏を駆け抜けてきた。
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いま、立教新座は東日本学校吹奏楽大会の出場を控えている。「7分間の青春」の最終章だ。綾我はこう語る。
「1曲にひと夏をかけて追求できるのが小編成のいいところ。立教新座は個性が強い部員が集まっているので、それぞれの個性が光る演奏をしたいです」
一方、結登は今度こそ25年から続く悔しさを晴らしたいと考えている。
「去年の西関東大会も東日本大会も、今年の西関東大会も、納得のいく演奏ができなかった。次の東日本大会こそは、自分たちにしかできない世界観をつくり上げ、悔いのない演奏にしたいと思っています。そのために自由曲を全力で突き詰めていきます」
10月11日の東日本学校吹奏楽大会には18校が出場する。立教新座はそのトップバッターだ。
綾我と結登という対照的なリーダーのもと、個性と知性を武器にしてたった1曲にひと夏を捧げてきた高校生たち。そして、季節は秋――彼らの最後の「7分間」がもうすぐ始まろうとしている。(敬称略)
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オザワ部長
吹奏楽作家。神奈川県立横須賀高校から早稲田大学第一文学部文芸専修卒。ペンネームは「架空の吹奏楽部の部長」という設定から。吹奏楽部を舞台にした小説やノンフィクションなど著書多数。
2025年3月には、ノンフィクション書籍「吹部ノート 12分間の青春」(日本ビジネスプレス)が刊行された。吹奏楽情報サイト「青春ブラボー吹奏楽部」(https://suisougakubu.net/)も運営している。


