
この社説のポイント
●東京地裁は判決で、未成年者の選挙運動を禁じる公職選挙法の規定は違憲と述べた
●若者にも政治的表現の自由は憲法上、当然に保障されると認めた意義ある判断だ
●70年余り規定を放置した責任は重い。国会は直ちに法改正に取り組まなければならない
若者にも政治的表現の自由は憲法上、当然に保障される――そう明確に認めた価値ある判断だ。国会は70年余り規定を放置した責任を自覚し、法改正に向けた議論を速やかに始めなければならない。
未成年者の選挙運動を禁じる公職選挙法の規定は無効だとして、提訴当時16~18歳の4人が国に損害賠償などを求めていた。東京地裁は判決で、未成年者の自発的な選挙運動まで一律に制限するのは「表現の自由」を保障する憲法21条に反する、と述べた。
選挙運動は、特定の候補者への投票を呼びかける行為を指す。公選法は18歳未満の選挙運動を禁じ、違反すると1年以下の拘禁刑か30万円以下の罰金が科せられる。1952年の改正で設けられた規定だ。小学生をも巻き込む人海戦術などの弊害から未成年者を守り、選挙の公正さを確保するのが目的とされてきた。
判決は、不当な行為を取り締まる規定は複数あるのに、未成年者の選挙運動のみ一律に禁じる理由が判然としないと指摘。選挙の公正さについては、未成年者の参加の弊害が立法過程で検討された跡はほぼなく、未成年者を守るなら不当な運動や動員を規制すべきで、法律で禁じる実質的根拠は見いだし難いとした。
欧米では未成年者の政治参加を広く認める国が多い。一律に禁じる日本は例外的だ。さらに、一方で投票権年齢を18歳に下げ主権者教育も広げながら、他方で18歳になる直前の高校生が特定候補の応援をすると処罰対象になるという「ねじれ」を抱えていた。
当事者である若者たちが理不尽な規定を明らかにした意義は大きい。裁判を通じて社会課題の解決をはかる「公共訴訟」で違憲判断を得た点も画期的といえる。
ただ、判決は、立法を怠ったことに対する損害賠償請求や、未成年の原告が次の選挙で選挙運動ができる地位の確認の訴えは退けた。また、未成年者を使用した選挙運動を禁止する規定は合憲とした。
若者の政治参加をどう広げるかは社会の課題だ。政治をわがこととして考える力は、投票所に足を運ぶだけで育まれるものではない。候補者や政策を評価し、それを周囲に語り、支持を呼びかける経験もまた、民主政治を支える重要な営みである。
公選法の規定を漫然と見逃し、若者だからこそ発せられる声を社会に反映する機会を逸し続けてきた責任は、メディアを含め大人たちにもある。司法からのボールを受けた立法府には法改正に取り組む責務があり、社会も強く後押ししなければならない。

- 18歳未満の選挙運動、一律の禁止は「憲法違反」と判決 東京地裁
- 【判決要旨】未成年者の選挙運動、一律禁止は「違憲」 東京地裁判決
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