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ノーベル化学賞の受賞が決まり、会見する東京理科大の硤合憲三名誉教授=2026年10月7日

この社説のポイント

●高市政権は科研費や国立大学の運営費交付金の大幅拡充を掲げる。一時のポーズで終わらせてはならない
●どちらもこの20年間減少や横ばいが続き、日本の研究力は低下し続けた
●研究時間を確保し、若手に安定した雇用環境や待遇を用意することも重要だ

 今年のノーベル化学賞に決まった硤合(そあい)憲三(けんそう)さんを祝福する電話で、高市早苗首相は「政府も科研費(科学研究費助成事業)や国立大学の運営費交付金をしっかり拡充し、科学技術研究の基盤強化を進めます」と述べた。

 確かに2027年度予算の概算要求をみれば、科研費は、前年度からほぼ倍増し、運営費交付金も1割増えた。

 今春の科学技術・イノベーション基本計画は、戦略的に支援する領域に「防衛産業」を指定する一方、科研費や運営費交付金の大幅拡充をうたう。こうした基礎研究を支える予算を安定的に確保していくことは、日本の研究力を再建する大事な一歩となる。科学技術政策への批判をかわすための一時的なポーズに終わらせてはならない。

 04年の国立大学法人化以来、運営費交付金は減少と横ばいが続き、研究力の指標となる注目度の高い論文数の国別順位は一貫して低下した。昨今の物価高や人件費上昇も考えれば、増額は不可欠だ。

 今年のノーベル物理学賞には、千葉大が参加する南極の観測施設「Ice(アイス)Cube(キューブ)」の国際共同研究のリーダーが選ばれた。国際卓越研究大学の認定をめざす大学でなくても最先端の研究に関わっていることを示す格好の例だ。

 過去のノーベル賞受賞者にも、地方の大学で学んだ人が少なくない。人材を幅広く育てる観点からも地方や中堅の大学への支援が欠かせない。

 当初予算でみれば科研費もこの15年間、ほぼ横ばいで、採択率も2割台にとどまる。不採択となった提案の中に、真に独創的なアイデアが含まれていないかが心配になる。

「選択と集中」が招いた現場の疲弊

 研究時間の確保も喫緊の課題だ。文部科学省の調査によれば、大学教員の研究時間は20年前に比べ4割近く減り、研究パフォーマンスを高める上での制約は何かとの質問への回答でも、「時間」が「資金」や「人材」を上回る。

 政府はこの間、経済活性化やイノベーション創出を念頭に重点分野を定め、大型の競争資金を拡充してきた。「選択と集中」が過度な競争と現場の疲弊、そして研究力低下を招いた一因であることを忘れてはならない。

 日本学術会議は昨年公表した提言のなかで「研究職の魅力低下」や「若手人材の研究職離れ」を指摘した。背景には、多くの若手が不安定な雇用環境に置かれ、成果が出やすいテーマに流れる現状もある。健全な競争は当然だが、安定した雇用環境とふさわしい待遇を用意しなければ、これからの研究を担う人材は確保できないと心得るべきだ。

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