横浜市長選で原沢敦美氏の当選が確実になり、支持者を前に敗戦の弁を語る前市長の山中竹春氏=2026年10月18日、横浜市中区

この社説のポイント

●横浜市では市長のパワハラにより、役所内に深刻な影響が出ていた
●各自治体は、首長らによるハラスメントを防止する条例の制定を。事後ではなく事前に
●条例の柱は独立した外部通報窓口、第三者調査、報復禁止など。定期的なハラスメント研修で抑止を

 各自治体が他山の石とし、ハラスメント防止条例制定の契機にする必要がある。

 職員へのパワハラで市長が辞職したことに伴う横浜市長選で、自民などの支援を受けた弁護士の原沢敦美氏が初当選した。辞職した前市長の山中竹春氏も立候補したが大差で落選。市長にあるまじき行為に有権者が明確に「ノー」を突きつけた。

横浜市長選で当選を確実にし、花束を受け取った原沢敦美氏=2026年10月18日、横浜市中区

 山中氏の問題は今年1月、人事部長が実名で告発する異例の形で表面化した。弁護士らによる第三者調査で、怒鳴る、書類を投げつけるなどの言動がパワハラ認定された。

「何が市長の気に入るか」

 組織にも深刻な影響が出ていた。報告書によれば、理由説明もなく幹部が市長室に出入り禁止となり、役所内は「何が市長の気に入るか」を探ることが優先される状態に陥った。人事権を背景にした職員支配が行われ、合理性に疑問のある人事異動に多くの職員が恐怖を感じ、心身の不調や退職に至る例もあった。

10月18日に実施した横浜市長選の出口調査から

 首長がパワハラをすれば職員や組織が傷つくだけでなく、耳障りなことも含め多様な情報が首長に届きにくくなり、誤った政策判断で住民に悪影響が及ぶ恐れもある。

 だからこそ防止が必要だ。一般財団法人・地方自治研究機構の調べでは、今年4月1日時点で172自治体が首長や議員らのハラスメント防止に特化した条例を制定している。議員の行為が対象の条例が多いが、首長らを対象とした条例の公布も2023年6件、24年23件、25年44件と増えており、さらに広げたい。

条例、セクハラやマタハラなども

 条例では首長らの行為が対象だと明記し、パワハラに限らずセクハラ、妊娠・出産や育児、介護に関するハラスメントなども禁じる必要がある。通報の「握りつぶし」を防ぐため自治体から独立した外部通報窓口を設置し、調査を弁護士ら第三者が行うことや通報者への報復禁止などが柱となろう。首長や議員らに定期的なハラスメント研修受講を義務付け、辞職・失職に至った実例を学ぶ機会を設ければ抑止も期待できる。

 窓口職員らへのカスタマーハラスメント(カスハラ)をめぐっては、自治体による対策が今月から法律で義務化された。首長には、職員を守る責務がある。自らが職員に苦痛を与えるのは論外だ。

 福井県は前知事のセクハラ問題を受けてハラスメント防止条例を制定。横浜市でも今回の問題の後、条例制定の準備が進む。選挙は万能ではない。有権者が選挙を通じて、ハラスメントをする恐れのある人物かどうかを見極めることはなかなか難しい。事前の制定が大事なゆえんである。

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