慶応大学医学部は栃木県出身の高校生を対象に、卒業後に県内の医療機関で勤務することを条件に入学する「地域枠」を設けると発表した。慶大が地域枠を設けるのは初めて。なぜ栃木が選ばれたのか?
福田富一知事と金井隆典医学部長が25日、県庁で協定を締結した。
県や慶大によると、対象は年に1人。県が6年間の修学資金を貸し付ける。大学卒業後の14年間のうち県内の医療機関で通算9年勤めれば、返済を免除する。選抜方法は一般の入試と同様で、現在の高校2年生の受験時から適用する。
地域枠は地方の医師不足への対応策として、自治体の要請で各大学が設けている。医学部専門の受験予備校・富士学院の調査では、全国の私立大30医学部のうち19が地域枠を設置しているが、慶大はこれまで設けていなかった。
なぜ栃木が選ばれたのか。
理由の一つは長年のつながりだ。金井医学部長によると、県内の医療機関には慶大の関連病院が多く、済生会宇都宮、県立がんセンター、国立病院機構栃木医療センター、足利赤十字などに人材を送ってきた。中には100年にわたるところもあるという。
もう一つの理由は、学生の多様化だ。同学部は1学年110人の定員のうち4割は系列高校からの進学。残り6割のうち7割も首都圏の高校出身者で、「医師に不可欠な多様な人材が交じり合い人間を大きくする」(金井学部長)ことが難しくなっていた。
慶大出身で、同学部と県との間で制度設立を取り持った県立がんセンターの尾沢巌理事長は「センターを含めて県内の多くの病院は医師不足で困っている。地域に貢献してくれる学生を養成する制度は大変ありがたい」と話す。(重政紀元)