静かな島の海辺に、おしゃれな飲食店が次々とできた。店主はみんな「梅田さん」。次男、両親、長男が次々に移り住み、ピザや蕎麦(そば)など自慢の味を提供しているのだ。耕作放棄地がグルメスポットになったと、島の人たちも喜んでいる。
瀬戸内海にかかる橋を渡り、山口県周防大島町の海沿いを車で走ること8分。集落が途切れた先に、新しいお店が三つ現れる。

ログハウスの薪窯料理店「サルワーレ」は2017年にできた。「生野菜とスモークタンのピザ」が名物で、週末は行列ができる。梅田美知朗(みちお)さん(46)夫婦が腕をふるう。
隣には美知朗さんの父光美(みつよし)さん(76)と母洋子さん(76)の店がある。24年に蕎麦店として始まり、デザート店に衣替えする予定だ。
その手前に今年3月5日、粗挽(あらび)き十割蕎麦「ふく朗(ろう)」がオープンした。兄の洋樹さん(51)夫婦が挽きたての粉で蕎麦を打つ。

見える範囲に他の店も家もない。家族6人が助けあい、手すりを付けたり道をならしたり、大工仕事も手早くこなす。「ほったらかしだった土地が観光スポットになった」と町の担当者は喜ぶ。
一家は1999年、約100キロ離れた宇部市の山中にレストラン「サルワーレ」を開いた。美知朗さんは大学を辞めて森の開墾から関わった。就職していた洋樹さんも戦略会議に加わり、建物も自分たちで建設。力をあわせて人気店に育てた。
最初に島に移住したのは美知朗さん夫婦だった。釣りが好きで周防大島に通ううち、のんびり流れる島時間に魅せられ、移住を決意。両親も応援してくれた。

周防大島は北側の国道がメインルート。南西側の県道は細く、いわば「裏ルート」だ。でも美知朗さんは「裏がいい」と直感した。宇部の店も当初「こんな山の中に客は来ない」と言われていた。
「わざわざ来てくれるお客さんを作ればいい」
県道沿いの耕作放棄地は雑木…









