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1950年代までに建てられた平屋の校舎(右)と72年に建てられた2階建ての校舎=2024年4月11日、和歌山市吉原、榊原織和撮影
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 三方を山と森に囲まれた和歌山市南部の吉原地区に、小さな校舎が立っている。2018年に休校した市立安原小学校吉原分校だ。

 古く懐かしい木造校舎に魅力を感じた人たちの間で、この場所を活用しようとする機運も生まれた。しかし、市は役割を終えた校舎を取り壊す方針で、活用の道が閉ざされる可能性が出ている。

切り妻屋根に土間廊下

 吉原分校は1898年ごろに安原尋常小学校の吉原分教場として開校し、1946年に現在の場所に移転した。

 50年代までに建てられた平屋と、72年に建てられた2階建ての2棟の木造校舎には、四つの教室と職員室、保健室、音楽室があった。バスケットボールコートほどの小さな校庭と、3レーンの25メートルプール。1~4年生が通い、5、6年生は安原の本校で学んだ。

 市内で精神科クリニックを営む伊良波範子さんは、自然豊かな環境に立つ木造校舎に、「ほっとする癒やしの力がある」と感じてきた。「貴重な環境財産だ」として、分校を大切に思う仲間とともに、2年ほど前から市側と話し合い、活用の道を探ってきた。

 市内に建築事務所を構える1級建築士の中西重裕さんも仲間の一人。「現在では数少ない規模の木造校舎で、瓦の切り妻屋根や板張りが残る外壁、靴を脱いで教室に上がる土間廊下などが当時の建築の特色を表している」と話す。

 築50年以上が経ち、景観の一部でもあることから、県庁舎本館(38年竣工)のように国の登録有形文化財にもなり得ると考えている。

民間活用策あれば譲渡も

 しかし、市は今のところ分校を取り壊す方針だ。

 市教育委員会教育政策課は…

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