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 東京都板橋区の静かな住宅街の一角に小さなパン屋がある。名前は「KajiPan!」。3坪ほどの売り場は、焼きたての香ばしく甘いパンの香りで満ちている。開店から2時間ほどが過ぎても、店の前には入店を待つ人の列ができている。

食パンの焼き上がりを待つ梶谷さん=2024年5月22日午前11時31分、東京都板橋区

脱サラして開いた念願の店

 店主の梶谷幸輝さん(52)は都内の酒類メーカーで働くかたわら、専門学校に通ってパン作りを学んだ。

 会社を辞めて、念願の店を開いたのは2014年3月。梶谷さんは「最初は素人のまねごとみたいだった」と振り返る。

 年々地域に愛される店になり、17年にはおいしいメロンパンがある店としてテレビで紹介された。購入者とデザインを相談して決める「一升パン」は直径45センチで重さは約2キロ。子どものお祝いごとなどで人気だ。

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看板商品のメロンパンやクロワッサン、食パン=2024年5月10日午後0時30分、東京都板橋区、山田暢史撮影

 店内に並ぶパンは約80種類。菓子パンや総菜パンの価格は一個130~180円ほど、食パンも1斤280円だ。開店当初から続けている商品はこれまで一度も値上げをせずにきた。

 しかし、長引く円安の影響などで原料の小麦粉は高騰が続き、仕入れ価格は1・5倍ほどに上がった。電気代や人件費の値上がりも経営への負担になり、梶谷さんは昨年9月にストレスで体調を崩した。

値上げ「パンが気軽に食べられないものに」

 値上げをすることを何度とな…

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