Smiley face
写真・図版
アメリカ文化研究者の関口洋平さん

 育児をする男性を表す「イクメン」という言葉が流行したことがありました。厚生労働省は今年、2010年から始めた「イクメンプロジェクト」を「共育プロジェクト」に看板替え。「イクメン」はもはや死語になったようです。

 男性の育児への「特別視」すら感じさせる、どこか軽薄なこの言葉が広がったことは、社会や子育てをめぐるどのような状況を映していたのでしょうか。「『イクメン』を疑え!」著者の関口洋平さんに聞きました。

「現実」ではなく「言説」だった

 「イクメン」は、「現実」ではなく「言説」だった。そんな風に感じています。その理想の男性像には政策的な意図が含まれ、同時に、今も社会の中に残るケアの男女不平等を覆い隠す働きもしてきました。

 似ているものに「女性活躍」があります。どちらも少子化対策や経済成長という政策的な目的をまとって社会に広がりました。本音は「女性も働いて欲しいけど、本分は育児」であり、「男性も育児をして欲しいけど、本分は仕事」です。「育児自体に価値があるから社会でサポートしよう」というものではありませんでした。全てを経済の物差しで測る社会の表れでもあります。

「育児は仕事の役に立つ」?

 象徴的なのは、「育児は仕事…

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