30代のなつさんは、今年5月に長男を出産した。
3年前に不妊治療を始めて、ついに授かった命。
治療中、痛い思いもつらい思いも、たくさん経験した。
初めての体外受精は、医師から「絶対大丈夫!」とお墨付きをもらっていたが、授からなかった。
病院の待合室で夫の胸を借りて、声を出して泣いた。
2度目の体外受精で、移植した受精卵の写真を見て「またダメかもしれない」と思ったが、妊娠。
悲しくて泣いた1回目の時よりも大きな声で、夫と抱き合って泣いた。
姉妹のような関係の母
出産後、初めて帰宅した日は、両親が家に来てくれた。
21歳の時になつさんを産んだ母とは、親子というよりは姉妹のような関係。
元気で明るくて、とにかくポジティブな人だ。
母は、筋腫が原因で子宮全摘出の手術を受けている。
手術前、なつさんがお見舞いに行った時、真剣な顔で「実は、言わなきゃいけないことがある」と切り出された。
ドキドキしながら聞いていると、母はこう続けた。
「なつが欲しいって言ってたスマホ、お父さんにお願いして私が先に買ってもらっちゃった……ごめん」
2人して大笑いし、その後、手術は無事終了。
数日後、「これがあなたたちが入ってた子宮です」と写真が送られてきた。
「私の宝物貸してあげる」
そんな母が、娘と2人きりになったタイミングで紙袋を差し出してきた。
「私の宝物貸してあげる。ちゃんと返してね」
ずっしりと重い紙袋で、なつ…