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中国籍の生徒が全校の約半数を占める鴨川令徳高校。海から約10メートルの位置にある=2025年4月7日午後、千葉県鴨川市、岩田恵実撮影

【連載】留日 中国から 日本へ渡る生徒たち

中国語の「留日」には、日本へ留学するという意味があります。中国では最近、中学を卒業後すぐに日本の高校へ渡ったり、中国の高校から日本の難関大学に「現役合格」したりする例も少なくありません。日本への留学が増える理由を探りました。

 生徒の半分が中国籍という高校が千葉県鴨川市にある。留学生数を押し上げたのは、中国で過熱する受験戦争を避け、日本での大学進学や就職も視野に自由な教育を受けたい留学生側のニーズと、経営のために生徒数を確保したい高校側の狙いが一致したためだ。

 房総半島の南東部に位置する鴨川令徳高校。海までの距離が約10メートルで、教室の窓からは太平洋が一望できる。ここに通う生徒100人(2025年4月現在)のほぼ半数が中国籍だ。

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 同校は、校舎の建て替えなど過度な設備投資と過疎化のあおりをうけ、12年ごろに当時の学校法人の経営難が表面化。18年ごろ、再建の柱の一つとして入試に留学生の枠を設けて募集すると、中国の生徒が殺到した。

仲介業者「何十人単位で」

 「成績ばかりを重視する中国の教育は厳しすぎる。距離も文化も近い日本で教育を受けたいと思った」。広東省出身で同校2年の林家慶さんは日本に来た理由をそう語る。林さんは22年に中国の高校に進学した。午前8時から午後6時までの授業時間に加え、朝は午前6時から、夜は午後11時まで自習を強いられた。耐えられなくなり、1カ月で高校を辞めた。留学の仲介業者から10校ほど日本の高校を紹介され、「景色がいい」という理由で同校を選んだ。

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鴨川令徳高校に通う中国出身の生徒。左から林軒楽さん、李欣蔓さん、林家慶さん。教室からは太平洋が一望できる=2025年4月7日午後、千葉県鴨川市、岩田恵実撮影

 広西チワン族自治区出身で2年生の李欣蔓さんは、日本の大学に進学してキャラクターデザイナーになりたいという夢を描いている。「中国では競争が激しすぎて、夢を叶えられない」と話す。

 自由な学習環境を求めて、また日本で大学進学、就職することを見据え、日本留学のニーズは強い。同校の和田公人理事長によると、仲介業者から「何十人単位で受け入れてくれないか」という依頼もある。同校では、入学試験や面接を実施し、外国籍の生徒の割合が半分を超えないように人数を調整している。理由は、日本語を使う環境や日本の生活文化を校内で保つためだ。卒業後、李さんのように日本での就職を視野に入れている生徒は多い。同校は、日本社会に順応できる力を養いたいとしている。

日本語能力の向上が課題

 同校の方針は、外国籍の生徒…

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