高校生の夏、野球の練習を終えて「またな」と別れた友と、二度と会えなくなった。
東京都立江戸川高校の教諭、庭田隆弘さん(36)は、当時の自分たちと同い年くらいの生徒たちを見ると、あの頃を思い出す。
2006年、都立小山台高校(品川区)の2年生だった庭田さんには、硬式野球班の同級生「いっちゃん」がいた。
夢も一緒だった
休み時間には一緒にバレーボールをした。試験勉強のために入った商店街のファミレスで、ドリンクバーのジュースを飲みながら、恋バナやテストの愚痴……。たわいない話で、気づけば夜。勉強は全然進まなかった。
1年生の文化祭。思いつきではじまった出し物の劇は、いっちゃんが「ドラえもん」役で庭田さんが恋人のネコ「ミイちゃん」役。「雑に顔を塗って、舞台で何をしゃべったか覚えていないくらい、とにかく楽しかった」
きゅっと目を細めて笑ういっちゃんが、がらりと表情を変えるのが、野球だった。コツコツ練習し、2年生の時に学年で唯一レギュラーに選ばれた。真剣な表情で練習に打ち込む姿に、庭田さんは「本当に野球が好きなんだ、と伝わってきた」と振り返る。
将来の夢も2人は一緒だった。庭田さんは歴史が好きで、社会科の教諭になりたいと思っていた。何げない雑談で、いっちゃんも同じ夢を持っていると知った。「社会科の先生になって、また野球に関われたらいいよな」。そんな話をした。
でも、「あの日」のことは、よく思い出せない。
「違う人だろう」信じたくなかった事故
2006年6月3日。港区の…