東京女子医科大学(東京都新宿区)が、同大卒業生を教員として採用したり昇格させたりする際、同窓会組織への寄付を評価材料にしていた。文部科学省は、運用実態を調べたうえで報告するよう同大に求めている。同大は取材に「寄付を強要していたわけではなく、問題があったとは考えていない」としている。
大学広報によると、医学部卒業生が教授や准教授などへの採用・昇格を希望した場合、教育や研究、診療などの実績のほかに「社会貢献」が評価基準となる。
この「社会貢献」の評価項目の一つに、2018年6月から昨年11月まで、同窓会組織の一般社団法人「至誠会」への寄付や同会の研修への参加などを盛り込んでいた。評価はポイント制で、寄付額などによりポイントが加算される仕組みだった。
大学広報は取材に「至誠会は病院や看護学校の運営という公益的事業をしており、寄付は社会貢献とみなした」と説明。「採用、昇格のために寄付を強要したわけではなく、数十の評価項目の一つでしかなかったので問題があったとは全く考えていない」とした。昨年11月にやめたことについては「至誠会との関係で様々な見直しをしたためであり、寄付の有無や金額の考慮が不適切だからではない」とした。
一方、至誠会の幹部は取材に「人事にあたり、寄付金の額によってポイントが増えるというような金品が絡む対応は極めて不適切で倫理上も問題があったと考えている」と話した。
同大をめぐっては、至誠会の元職員が元事務長と共謀し、勤務実態がないのに約2千万円の給与を受け取った疑いで、警視庁が今年3月、岩本絹子理事長(至誠会元代表理事)の自宅などを家宅捜索している。
文科省によると、同省は関係者からの情報提供を受けて今年5月、大学側に対し、寄付を人事に反映させた経緯や運用実態について調査を要請したという。文科省の担当者は「大学の人事は、一般論としては社会の理解が得られるよう業績で評価するべきもの。現段階では適切か不適切かの判断はできず、大学からの報告を待ちたい」としている。(上野創、久永隆一)