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 人類はなぜ、文明を自ら滅ぼすかのような世界大戦を2度も繰り返したのか。第1次大戦後に「ユートピア」志向の理想主義が湧き上がったが、その内実は空疎であり、力を重んじる「リアリズム」に塗り替えられた。そう捉えたのが、20世紀を代表する歴史家E・H・カーだった。

 マーク・マゾワー氏は、深い学識と構想力においてカーを想起させる歴史家だ。ロシアのウクライナ侵攻、イスラム組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突、中国の台頭……。世界はいま再び、むき出しのリアリズムの論理に絡め取られている。だが戦いの後には必ず、秩序を構想しなければならない時が来る。いまの混沌(こんとん)の先、「夢の跡」に立ち現れる国際秩序はどのようなものなのか、マゾワー氏に問いを重ねた。

朝日地球会議2024

マーク・マゾワー氏のインタビューを収めた動画は、「朝日地球会議2024」で配信中です。

 冷戦終結後、自由民主主義の「勝利」を語ったのが、昨年の朝日地球会議でオンライン登壇したフランシス・フクヤマ氏だ。一方、マゾワー氏は「自由民主主義はかなり最近、複雑な状況下で生まれた現象に過ぎず、永続するなどと考える理由はない」と指摘する。

  • 【フクヤマ氏の語った内容はこちらから】リベラリズムは「終わり」なのか 弱点見つめ、暴力の連鎖へ抵抗を

 民主主義はもろい。それでも…

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