Smiley face
写真・図版
不正アクセス

この社説のポイント

●不正アクセスによる情報漏洩(ろうえい)が相次ぎ、政府は「緊急対策パッケージ」を公表した
●基本対策の徹底、政府とセキュリティー企業との連携強化・情報共有などが柱だ
●真に実効性のあるものにできるかが問われる。官民とも優先度を上げて対応することが求められる

 第一歩とされる項目は示された。真に実効性のあるものにできるかが問われる。不正アクセスによる情報漏洩(ろうえい)が相次ぐ問題で、政府は「緊急対策パッケージ」を公表した。

 内容は、現時点で各省庁が考えうる対策を列挙してまとめたように見える。基本対策の徹底、政府とセキュリティー企業との連携強化・情報共有などが柱になっている。

 AI(人工知能)活用も随所でうたう。システムの脆弱(ぜいじゃく)性の発見と対策を進め、海外のAI企業と協力を広げて、脆弱性やサイバー攻撃の情報を早期に入手するという。

 AI悪用で攻撃が飛躍的に効率化され、拡大するなか、防御にもAIは使わざるを得ないだろう。一方で、AI活用を通じて、海外企業に機微な情報を明け渡すリスクにも注意しなければならない。

写真・図版
サイバーセキュリティーに関する関係閣僚会議で発言する高市早苗首相(左端)=2026年11月6日、首相官邸

 重大な事案や、被害側から要望がある場合には、官民の専門家でつくる組織を派遣する仕組みも入った。中小企業の被害でも初動を支援する。こうした官民連携は急務と言える。医療機関や学校の支援も記された。

疑問を感じる「サイトブロッキング」の記載

 疑問を感じる記載もある。「施策一覧」に、「通信事業者によるアクセス抑止策」を「早急に検討する」とある。サイト接続を強制的に遮断する、ブロッキングと呼ばれる手法だ。全ユーザーの通信を事業者が把握するのが前提となり、国民の「通信の秘密」の侵害を伴うとして、長く専門家らによる検討が続いている。サイバー防御を口実に議論が飛ばされるのならば、おかしいと言わざるを得ない。

 民間企業の対応も重要だ。被害は、基本対策が不十分だった例が多いという。利用者のFX(外国為替証拠金取引)で身に覚えのない取引が相次いだGMOインターネットグループは、システムの欠陥を2年前に把握していた。GMOはセキュリティー事業を手掛けているが、「優先順位の判断、リスク分析が足りなかった」と認めた。

 流出した情報は回収できず、影響は深刻だ。運転免許証画像などが流出したカーシェアリング「タイムズカー」を巡り、親会社は、対応費用と利用者への「お見舞金」で特別損失55億円を計上する。

 サイバー防御は、企業の最優先課題の一つになった。不必要な個人情報は持たず、攻撃を想定して初動対応を確認し、早急な回復を図れる体制を整えるのは必須だ。脆弱性を放置していないか。古いシステムの最適化を怠っていないか。政府頼みや一部の部署任せではなく、経営判断の優先順位を上げ、リスク管理を急ぐことが求められる。

  • 【随時更新】個人情報の漏洩の恐れ、公表した主な企業一覧

「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。

Share.