
連載「窓」
その寺にはいつも、人の気配がない。だが、境内に雑草が生い茂ることはなく、白い砂利の地面がまぶしい。
福岡県柳川市の川沿いに明照院は立つ。15坪ほどの平屋で、建立は室町時代。石碑には「大永3年」とある。
住職は、いない。
50年余り務めた内田哲盛さんが2003年に亡くなった。継ぐものがおらず、不在のまま。ただ、内田さんの死から7年が過ぎて、本堂が建て替えられた。
仏様も、いない。
寺が「休眠」のまま残されると、犯罪に悪用されるともいわれる。23年、仏様の魂を抜く法要が営まれた。ただ、今も月に1度、ここに集まる人たちがいる。
だれが、何のために?
新しい本堂を寄進した人がいた。
近くに住む諸藤栄一さん(74)。諸藤さんは言った。
「子どもの頃、おしょさんから頂いたものをお返しするつもりでした」――。
諸藤さんは子どもの頃、夏休…





