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線状降水帯による大雨で冠水した市街地=2026年8月28日午後0時33分、富山県氷見市、朝日新聞社ヘリから

この社説のポイント

●国連環境計画は、パリ協定で掲げた「1.5度目標」の達成が難しくなったと発表した
●温室効果ガスの排出が多い先進国より、途上国が深刻な影響を受ける。不均衡を是正する「気候正義」が問われる
●11月のCOP31で各国が対策を話し合う。1.5度目標を手放してはならない

 気候危機との闘いは、新たな局面に入った。国連環境計画(UNEP)は、世界の平均気温上昇を産業革命前から1.5度に抑えるパリ協定の目標達成が難しくなった、とする報告書を公表した。国際社会は温暖化の現実と科学的知見を直視し、結束して対策を加速させる必要がある。

 世界の平均気温はすでに約1.4度上昇し、現状のままでは今世紀末に2.6度を見込む。被害を抑えるには、超過の期間と上昇幅をできるだけ小さくし、再び1.5度以下に戻せるかが鍵になる。

 異常気象が、世界各地で日常になりつつある。日本では記録的な猛暑や線状降水帯による豪雨が相次ぎ、暮らしや経済への打撃が広がる。海外でも洪水や干ばつ、山火事が頻発している。

 見過ごせないのは、気候変動がもたらす被害の不公平さだ。海面上昇の脅威にさらされる島嶼(とうしょ)国をはじめ、温室効果ガス排出に先進国ほど責任のない途上国が、深刻な影響を受ける。

 ネパールの国境地帯で起きた大規模な土石流で、多くの命が失われた。シャハ首相は「気候変動によって起きたことに疑いの余地はない」と支援を訴えた。世界平均で1.5度上昇した場合でも、ヒマラヤなどの高地では約2度、北極では最大6度の昇温が予測される。排出責任と被害の不均衡を是正する「気候正義」が問われる。

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激しい土石流で建物が押し流されたネパールの被災地=2026年8月30日、ネパール中部ビドゥール

 温室効果ガスの排出削減には時間もコストもかかる。だが、先送りした場合に将来の世代が被る負担や被害は、はるかに大きい。

 持続可能な社会を未来につなぐ責任は現役世代にある。猛暑や洪水への備え、防災インフラの整備など目の前の被害に備える適応策と合わせ、再生可能エネルギーの拡大や脱炭素技術への投資などを着実に進めたい。

 国際社会の分断も懸念される。ロシアによるウクライナ侵略の長期化や中東情勢の緊迫は、軍事活動に伴う温室効果ガス排出を増やし、化石燃料への依存も強めかねない。平和の維持と気候の安定には国際協調が不可欠だ。

問われる各国の対応

 11月にトルコで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP31)は、各国の意志が試される場となる。日本も排出削減と途上国支援の両面で役割を果たしたい。パリ協定から離脱した米国にも復帰を粘り強く促すべきだ。

 達成が厳しくとも、1.5度目標を手放してはならない。排出の恩恵を多く受けた国や世代が相応の責任を引き受ける。いまを生きる私たちにその覚悟が求められる。

  • 気温上昇は数年内に1.5度超過へ、国連が報告書 戻るシナリオ提示

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