目の前で急に人が倒れた――。そんなときに取るべき行動は、119番通報と、AED(自動体外式除細動器)の使用、胸骨圧迫(心臓マッサージ)の実施です。医療機器であるAEDを一般市民も使えるようになって以降、9000人以上の命が救われています。今年、設立10周年を迎えた日本AED財団が、さらなる普及に向けて課題を話し合いました。

乗り越えないといけない「5%の壁」
「『5%の壁』が大きく、なかなか乗り越えにくい。だけど、乗り越えないといけない」
8月上旬に東京都内で開かれた日本AED財団10周年記念シンポジウムで、理事長の三田村秀雄さんが強調しました。
「5%の壁」とは、街中や自宅で倒れた人にAEDによる電気ショックが実施される割合のこと。2014年以降、4~5%程度で推移しています。
AEDは2004年に医療関係者だけではなく市民も使えるようになりました。心臓がブルブル震える「心室細動」が起きた際に、電気ショックによって正常なリズムに戻すための医療機器です。

厚生労働科学研究費補助金による調査では、2024年現在、市中に推計71万台が設置されているといいます。
市民がAEDを使って救った命は、解禁翌年2005年の年間12人から、2024年は777人と大幅に増加しました。これまでに9000人以上の命が救われていますが、大きく変化していないのがAEDの電気ショックが施される割合です。
総務省消防庁によると、2024年に誰かの目の前で突然心臓が止まり、倒れた人は2万7769人でした。そのうちAEDで電気ショックが施されたのは1449人で、約5%にとどまりました。

1分遅れるごとに救命率は約10%低下
AEDが使われて電気ショックが行われる率が低い背景には、心臓突然死のおよそ70%が、近くにAEDのない自宅で起きていることが挙げられます。
また、AEDの場所が分からない、とっさの救命処置ができないといった理由が考えられるそうです。
心臓が止まった場合、AEDによる電気ショックが1分遅れるごとに救命率は約10%ずつ低下します。
近年、救急車が到着するまでの時間は全国平均で約10分です。実際には道路や現場の状況によって、何分かかるか分かりません。命を救うためには119番通報をして待っているだけではなく、居合わせた人による救命処置が重要です。
電気ショックの有無は、その後の社会復帰にも大きく関わっています。消防庁によると、1カ月後に社会復帰できた人は、心肺蘇生を受けなかったケースでは3.7%、受けたケースは10.4%でした。一方、AEDの電気ショックが使われた場合は44.4%でした。
「ポケモン GO」とも連携
より多くの人にAEDを使ってもらうため、普及啓発に取り組んでいるのが2016年設立の日本AED財団です。
理事長の三田村さんは、AEDの問題点として「設置場所へのアクセスが悪かったり、近くになかったりする。さらに、どこにあるか分からないという声も聞く」と話します。
また、救命以前に、居合わせた人には「誰かがやるだろう」「目立ちたくない」「怖い」「おせっかいだ」といった心理が働くと指摘。幼いうちからAEDを知ってもらう「救命教育」が大切だといいます。
現在AEDマップは複数あり、日本AED財団には「どのマップを使えばいいのか」という意見も届いていました。マップの統合も検討されていましたが、今後、GPS機能が搭載されたAEDの設置が進めば「全国レベルのマップ構築が可能になる」と期待が寄せられているそうです。
三田村さんは「学校やスポーツ施設、駅や集合施設などにAEDが設置が進んでいますが、今後、さらにコンビニや交番など『あそこに行けば必ずAEDがある』という場所を増やしていきたい」と語ります。
今年5月には、ゲームアプリ「ポケモン GO」を運営するスコープリー・エクスプロア社とパートナーシップ契約を結び、AEDの設置箇所をゲーム内のキースポット「ポケストップ」として登場させる取り組みを始めました。三田村さんは「いろんな方に興味を持っていただくために模索していきます」と話しています。
目の前で人が倒れたらどうする? AEDの使い方
日本AED財団によると、目の前で急に人が倒れたらすぐに駆け寄って反応を確認し、周囲に人がいたら応援を求めることが大切だといいます。
主なポイントはこちら
・反応を確認する
・応援を呼ぶ
・119番通報をする
・胸骨圧迫(心臓マッサージ)をする
・AEDを使う

倒れた人のもとにAEDが到着したら、電源を入れます。開けると自動で電源が入るタイプもあり、流れてくる音声ガイダンスに従って操作をします。
「パッドを胸に装着してください」などと音声で指示があるほか、貼る位置も電極パッドに描かれています。
貼る位置は、倒れている人の胸の右上(右鎖骨の下)と、胸の左下(脇の5~8cm下)の2カ所です。

パッドは素肌に貼る必要がありますが、女性に使用する際はパッドが貼れればブラジャーを外す必要はありません。余裕があれば上着やタオルなどで覆って見えないようにするといいそうです。
日本AED財団は、一刻を争う事態では相手が女性であってもためらわずにパッドを装着してほしいと呼びかけています。妊娠中でも、心停止が疑われたら命を救うために積極的に使用するよう勧めています。
パッドを貼ると、AEDが自動で心電図を解析し、電気ショックが必要かどうかを判断します。
「ショックが必要です。ショックボタンを押してください」などの音声ガイダンスが流れたらボタンを押します。感電のおそれがあるため、ボタンを押す瞬間は倒れている人に触れないように注意を促されます。
なかにはオートショックのタイプもあり、電気ショックが必要だと判断すると、自動でショックを実行してくれます。
電気ショックのあとも、すぐに胸骨圧迫を再開することが重要です。
「ショックが不要」と判断されるケースもありますが、その場合も倒れている人が嫌がるしぐさを見せない限り、胸骨圧迫は続け、救急車の到着を待つことが大切です。
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