Smiley face
写真・図版
ショートフィルム「日々をつなぐ」の完成披露イベントで登壇した荻原卯月(うつき)さん=日本イーライリリー提供
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 娘に授乳していたころから、左胸のしこりに気づいていた。

 だが「きっと乳腺炎だろう」と、検査を受けなかった。

 宮城県に住む荻原卯月(うつき)さん(58)が、乳がんと診断されたのは37歳の時。

 4歳になった娘と一緒にお風呂に入っていて、「ママのおっぱい、変」と言われ、受診を決心した。

 しこりが大きくなったせいで、子どもから見てもわかるほど、胸が引きつっていた。

 すぐに乳がんと診断が下り、医師からこう言われた。

 「ここまで大きいとステージ4でしょう。転移も考えられます」

 しこりを小さくしてから摘出手術をするため、半年かけて術前抗がん剤治療をすることに。

 「5年後の生存率は10%以下」という記述をどこかで見つけて、ショックを受けた。

 だが、10歳の息子と4歳の娘の前では、気丈に振る舞った。

 「2人とも我慢することなんてないからね。行きたいとことか、やりたいこととか、何でも相談してね」

夫の提案で愛知万博へ

 きっと私は5年も生きられない。子どもたちに何を残せるだろうか。

 そんなことを考えながら、治療を受けていた。

 「生きるための治療」ではなく、「死ぬまでの時間を作るための治療」になっていた。

 そんな中で、夫が「家族で愛知万博(愛・地球博)に行こう」と言い出した。

 人が多いところには行きたがらない夫からの、珍しい提案。

 「家族の思い出づくりかな」と思ってしまった。

 シベリアの永久凍土から出土したマンモスは迫力があったが、どこかつまらない。

 どこに行っても、何を見ても「これが最後かな」と思ってしまい、心から楽しむことができずにいた。

 そんな気持ちが消え去ったのは、人気施設「サツキとメイの家」を見ていた時のことだ。

 宮崎駿(はやお)監督のアニメ映画「となりのトトロ」の主人公姉妹が暮らす家を再現した建物は、祖母の家に似ていた。

 小さなタンスを見て「これ、おばあちゃん家(ち)にもあったな」と、引き出しを開けてみる。

 すると、その中に懐かしの「…

Share.